「ライアスは?」
「このまま御側に……」
「命令?」
ライアスの話では、上からの命令でこのままセネリオの護衛を続けるように命令されたという。
科学者や医者·看護師の過保護過ぎる対応に苦笑していたが、敵が紛れ込んでいるかもしれないので、護衛軍の判断は適切といっていい。
また、場合によっては相手を射殺してもいいという。
「怖いね」
「それは、クレイドの身を――」
「わかっている」
セネリオは訓練を積んだ軍人ではないので、人間の生き死に敏感になってしまう。
たとえ相手がイシュバールに害する存在とはいえ、その者が殺される現場を目撃したくないと考える。
しかし本音をライアスに話すことはせず、自分の意志を伝えれば軍人自体を否定してしまうと理解していた。
だからこの件に関しては彼等に任せ、セネリオは下手に口出しすることはしない。
「ライアス」
「はい」
「若いね」
「クレイドより……」
「十代前半らしい」
「なるほど」
「で、汚い」
「一体、何があったのでしょう」
「それを調べないといけない。ただ、その前に……この姿を何とかしてやらないといけない」
突然のセネリオの発言に、ライアスは反射的に友の顔を凝視してしまう。
敵かもしれない相手に、優しさを見せる。
そのことにいい顔をしない者も多いだろうが、ライアスは友の言葉を否定することはできない。
ただ「それがいいかもしれません」と、言葉を返していた。
「風呂……でしょうか」
「それは、侍女長に任せる」
治療や検査に差し支えるということで、出現時に纏っていた服から丈の長い白い検査服に着替えさせられているが、露出している肌の至る個所が土で汚れている。
また日々の手入れを怠っているのか、茶色の髪は乱れ毛先が痛んでいることが遠巻きから見てもわかった。


