巡り合いの中で


 怒っている。

 というより、悔しい。

 が、彼の本音。

 今までこのような感情を抱いたことはなかったが、最近急に苛立ちを覚えるようになった。

 失いたくない。

 その想いが増幅し、感情を荒立てる。

 集中できなかったことが関係してか、珍しくキーボードを打ち間違えてしまう。

 いつもなら途切れることなくプログラムを組むことができるが、今日に限って間違いが目立ってしまう。

(くそ!)

 これまた、珍しく悪態を付く。

 今の状況では完成させるのは無理と判断したのか、セネリオは仕事を止めてしまう。

 徐に椅子から腰を上げると、部屋から出て行く。

 そして向かったのは、父親が仕事をしている部屋。

「いいかな」

「どうした」

 何の前触れもなく息子が登場したことに、アゼルは思わず仕事の手を止めてしまう。

 しかし邪魔扱いすることなく、アゼルはソファーを指差すと、そこに腰掛けるように促す。

 その間自身は仕事を行いつつ、暗い表情のセネリオにどのような理由でやって来たのか尋ねる。

「いや、父さんの顔を見たくて」

「いつも、顔を合わせているじゃないか」

「なら、親子の交流」

「そういうタイプか?」

「仕事のことで……」

「プログラムを組むのは、得意じゃないか」

 どのようなことを言っても、アゼルは簡単に返してくる。

 勿論、セネリオもそのようなつもりで来たわけではないので、それ以上の言葉が続かない。

 余裕が感じられない息子にアゼルは嘆息すると「聞きたいことがあるのなら、素直に聞けばいい」と、背中を押してやる。

「いいの?」

 父親の言葉に、セネリオは聞き返す。

 それに対しアゼルは頷くと「内に溜めているより、吐き出してしまった方がスッキリする」と、アドバイスを送る。

 父親のアドバイスに従うかたちでセネリオは、アリエルに故郷の惑星が見付かったら戻るのか――と、尋ねたことを話す。