巡り合いの中で


「お、美味しいです」

「よかった」

「こんなに、甘い果物なんて……」

「食べたことない?」

「はい」

 まさか、この世にこんな食べ物があったとは――

 アリエルの驚きが続く。

 同時に、これはどのように栽培しているのか気になる。

「これは、温かい場所の果物。だけど今は、栽培技術も発展しているから、季節に関係なく取れる」

「ですから、このように……」

「そう」

 便利な代物を作るだけが技術力ではなく、食の方面もこの高い技術が使われている。

 というセネリオの説明に、科学力が高くなれば、こんなに美味しい物が普通に食べられるのだとアリエルは学ぶ。

 何より、マンゴーが普通に食べられる。

 アリエルの世界であったら、このような物は真っ先に王家に献上される。

 一般庶民の口に入ることは決してなく、このような物が存在している――ということしか、知らないだろう。

「全部、食べていいよ」

「クレイドは……」

「食べたい時に食べるよ。今は、そんなに腹は減っていないし。それに見舞いの品だし、奪うわけにはいかない」

 だから、全部食べていい。

 と、セネリオは言う。

「有難う……ございます」

「で、アリエル」

「何でしょうか」

「ひとつ聞いていい?」

「はい」

「故郷に、帰りたい?」

「見付かったのですか!?」

 それに対し、セネリオは頭を振る。

 現在進行形でアリエルの故郷の惑星を探しているが、それらしき惑星は見付かっていない。

 また見付かっていないことに、アリエルはマンゴーを食べる手を止めると、落胆した表情を浮かべる。

 その表情にセネリオは、再度「帰りたい?」と、尋ねる。