「これで、よろしいでしょうか?」
「大丈夫」
「では、私は――」
「有難う」
セネリオの言葉に侍女は頭を垂れ、踵を返す。
バスケットを受け取ったセネリオはドアを閉めると、アリエルのもとへバスケットを持って行く。
「それは?」
「見舞いの品」
「果物ですか」
「そう」
「そんなに、いい物を……」
バスケットいっぱいに入れられている果物に、アリエルは驚きを隠せない。
手に取って果物を見てみたいらしく、アリエルはベッドから身体を起こす。
その行為にセネリオはサイドボードにバスケットを置くと、アリエルが倒れないように彼女の背中を抑えてやることにした。
「す、すみません」
「いいさ」
「あの……果物ですが……」
「どれが食べたい?」
「これは、何でしょうか?」
「マンゴーだけど、知らない?」
「美味しいですか?」
「甘くて美味しい」
セネリオの言葉に、アリエルは興味を示す。
甘い果物は、殆ど食べたことがない。
これを食べることができるのは、高貴な身分の者のみ。
だからどれほど甘い果物なのか、興味が尽きない。
幸い気を使って、侍女が果物ナイフを用意してくれている。
セネリオは椅子に腰を下ろすと、マンゴーを手に取り皮を剥く。
「じ、自分で……」
「アリエルは、病人」
「で、ですが……」
自分で皮を剥くというが、セネリオは首を縦に振ることはない。
それに時々果物を購入して食べているので、果物の皮を剥くのは慣れている。
マンゴー半分皮を剥くと、それをアリエルに差し出す。
マンゴーを受け取ったアリエルは軽く噛むと、予想以上の甘味に驚く。


