この命令は、更にライアスを追いつめる。
結果、ライアスは上官に除隊を申し出てしまった。
それほどセネリオが持つ力は強大で、その気になれば相手の運命そのものを奪い去ることも可能である。
いや、最悪の場合、相手はイシュバールにいることができなくなってしまう。
しかし、セネリオはそのようなことは行わない。
というより、自分が持つ力の強さを知っているので、滅多に行使しない。
だから、セネリオがそのようなことを口にすると、勘違いされてしまう。
だからこそ、ライアスは命令が下る前に、自分から除隊を申し出てしまった。
「ですが、ライアスさんは……」
「そう、今は護衛軍にいる」
「クレイドの力……ですか?」
「力というか、そうしてほしいと頼んだ。護衛軍にいた方が、何かと都合がいいし。それに、呼び出せる」
「確かに、ご一緒にいることが……」
「訓練とかある時は、呼び出しをすることはない。訓練を怠ったら、仕事にならないからね」
セネリオにとってライアスは、良き友人。
また、父親以外で心を許せる者。
そう、アリエルに語る。
「素敵です」
「そう?」
「はい」
とてもいい話を聞けたことに、アリエルは笑顔を見せる。
アリエルの笑顔に誘われるように、セネリオも笑顔を見せた。
ふと、誰かが訪ねて来る。
セネリオはミーヤを床に置くと、椅子から腰を上げ、訪ねて来た者を出迎える。
訪ねて来たのは侍女で、まさかセネリオがドアを開けるとは思ってもみなかったのだろう、思わず甲高い悲鳴を上げた。
「どうした?」
「し、失礼しました」
「いや、構わない。で、何?」
セネリオの質問に侍女は、籠に沢山果物が入れられているバスケットを差し出す。
そのバスケットを見たセネリオは、侍女が来た理由を悟り「有難う」という言葉と共に、バスケットを受け取ると、どのような果物があるのか確かめていく。
美味しそうな果物が揃っていたんだろう、満足そうに頷く。


