「大丈夫だったのですか?」
「ライアスがいたから」
「安心しました」
「後で、ライアスに怒られた。まあ、心配しているから本気で怒ったんだろう。それからは、気を付けている」
「ライアスさんって、優しいのですね」
「いい奴だよ」
腹を割って、話すことができる。
また、普通なら気を使っていけないことも言ってくれる。
ライアスは裏表のない人物なので、だからセネリオは友として付き合っている。
それにライアスに対し、滅多に使わない権力を行使したと話す。
「何か、悪いことを――」
「いや、悪いことじゃない」
ライアスは最初、護衛軍の人間ではなかった。
彼は一般兵として入隊し、いつか多くの者が憧れる〈護衛軍〉に所属が変更されることを夢見ていた。
そして当時からライアスの持つスキルは高く、彼の名前は幾度となくセネリオの耳に届いていたという。
同時に「ライアスという人物は、どういう奴か」と、興味を持っていた。
「お二人が出会ったのは、いつなのですか?」
「出会い……か」
二人の出会いは、セネリオとアリエルの出会いに似ていた。
多くの者が〈後継者(クレイド)〉の名前が示すように、敬意を示す。
しかし唯一ライアスは、セネリオに進言した。
これによってライアスは、夢であった〈護衛軍〉への所属を諦めないといけないと考えた。
いや、その前に除隊しなければいけないと頭を抱える。
だが、セネリオにとってこのような発言をされたのは一度としてない。
だからライアスの進言に、セネリオは大笑いをした。
勿論、面白いから笑った。
そのような意味であったが、ライアスは別の意味で捉えてしまい、顔面蒼白になってしまう。
後で当時のことを聞けば「それ相応の処罰を受けないといけないと思った」と、言っていた。
勿論、セネリオはそのようなことをするつもりはなかった。
臆することなく進言する勇気に興味を示し、ライアスがどのような人物なのか報告するように命令する。
その命令は一気に周囲に広がり、多くの者が「ライアスが、クレイドの機嫌を損ねた」と、陰で噂をする。


