セネリオの質問に、アリエルは考える。
身分等の理由で、侍女の仕事を選択するしかなかった。
だが、最初から複数の選択が用意されていたら、天職と呼んでいる侍女になったかわからない。
「どんな仕事があるのかわかりませんが、多分……興味がある仕事に……でも、侍女も好きです」
「そうか」
「なんだか、おかしいです」
「おかしい?」
「以前でしたら、これが当たり前と思っていました。ですが、今は違う考えがあっていいと知りました」
「選択の自由だ」
「はい」
「で、別の話になるけど……見舞いの品を用意してある。と言っても、後で侍女が持って来る」
「見舞いの品」に、アリエルは申し訳なさそうにしている。
態々部屋に来てくれただけで嬉しいというのに、見舞いの品まで用意してくれている。
といって、受け取らないとセネリオがいい表情をしないので、断るわけにはいかない。
だからアリエルは、素直に受け取ることにした。
「良かった」
セネリオの反応にアリエルは、正しい選択をしたと安堵する。
何度か一緒に出掛けているので、大まかであるがセネリオの性格を理解しつつあった。
我儘や自分勝手というわけではなく、特定の誰かに何かをしてあげるのが好き――というのが、彼の第一の特徴であった。
第二が、好奇心旺盛。
子供っぽいというわけではないが、何かに集中すると周囲が見えなくなってしまう。
だからこそ、高い知識と技術力を有している。
これについては、ライアスから聞いているので間違いない。
「果物にしたけど、いいかな?」
「果物は、大好きです」
「好きな果物って、ある?」
「苺やサクランボが、好きです」
アリエルの果物の好みに、セネリオは何度か頷く。
今の発言で、アリエルの好みが判明した。
また体調が悪くなった時、これを参考にしようとセネリオは考える。
いや、それだけではない。
個人的な贈り物としても果物は最高なので、時折プレゼントしようかと悩みだす。


