「なるほど」
「お、おかしいですよね」
「おかしい?」
「こういうことで、寝込んでしまって……」
「いや、そのようなことはない。アリエルは、何も知らない世界からやって来た。宇宙なんて、知らなかったんだろう? 確か地上が停止していて、空が回転している……と、思っていた」
「……はい」
「そのように教えられていたのに、それが違うとわかった。下地となる知識がないのだから、仕方ない」
そのように話、セネリオは微笑む。
以前アリエルから聞いているので、セネリオは彼女の世界の学問状況を知っている。
高い教養を得られるのは高貴な身分の者で、尚且つ男でなければいけないという。
イシュバールは身分に関係なく誰でも高い教養を得られ、望めばあらゆる役職に就くことが可能である。
男尊女卑。
は言い過ぎだが、身分によって学べる学べないが決まってしまうのは、何ともおしいこと。
身分が低い者の中に、将来大発見や大発明をする者がいるかもしれない。
身分によって可能性を潰してしまうことは、発展に繋がらない。
これもまた、未開惑星の特徴のひとつとセネリオは考える。
「……クレイド」
「うん?」
「私も、勉強することができるのですか?」
「したいのなら。だけど、急にどうして――」
「女の方がクレイドのように、科学者として働いていまして……その……かっこいいと思いました」
「科学者になりたい?」
「い、いえ。私は侍女の仕事が好きでして、これが天職と考えています。ですが、勉強には興味が……」
「そのように興味を持つことは、悪いことじゃない。興味を持って勉強した方が、身に付く」
セネリオの説明に、アリエルはコクコクと頷く。
勉強をしたいというアリエルにセネリオは、もしイシュバールに産まれていたら、今の侍女の仕事をしていたのか尋ねる。
彼女は侍女の仕事を「天職」と言っていたが、最初から学校に通える状況であったら違っていたかもしれない。


