二人の仲を裂くな。
それより、応援しよう。
が、彼等の身近にいる者の合言葉。
「この仕事がある程度片付いたら、アリエルの見舞いに行く。その間、果物を用意しておいてほしい」
「かしこまりました」
これ以上何かを言うと、後が面倒。
それがわかっているから、侍女は敢えて何も言わないことにする。
報告を終えた侍女は頭を垂れると、退室する。
侍女が立ち去ったことを確認すると、セネリオは仕事を中断し、何を思ったのかインターネットで検索しだす。
現在、セネリオは自室に篭って仕事をしているので何ら問題はないが、もし多くの科学者がいる場所で同等のことを行ったら、生暖かい視線を送られていただろう。
勿論、侍女との会話も聞き耳を立てられる。
セネリオが、仕事を止めてまで検索したのは「正しい見舞いの仕方」という、何とも彼らしい項目であった。
真剣な表情で、画面を見入る。
いつも何でもそつなくこなすセネリオであったが、これに関しては全く知識にないので、懸命に勉強する。
(……なるほど)
知らない知識を得たことに、満足する。
セネリオは昔から勉強は嫌いではなかったので、これくらいは朝飯前。
それに、どちらかといえば楽しかった。
(そうだ! 仕事仕事)
検索し、満足してはいられない。
今行っている仕事をきちんとこなさなければ、見舞いどころではない。
セネリオは大きく伸びをし凝り固まった肩を軽く揉むと、いつになく早い速度で仕事を進めて行く。
これも早く見舞いに行きたい気持ちがそうさせているのだろう、キーボードを叩く手に力が入る。
現在、あるプログラムを組んでいる。
勿論、これはセネリオの得意分野。
だからこそ、仕事はあっという間に進められていく。
切のいい部分までプログラムを完成させると、セネリオはポンっと強くキーボードを叩く。
そして時刻を確認すると、先程侍女が報告に来た時から30分しか時間が経過していない。
徐に通信回線を開くとセネリオは、侍女に見舞い用の果物が用意できたのか確認する。


