巡り合いの中で


「医者の診察は?」

「勿論です」

「で、何と?」

「疲労が原因と、申していました」

 その説明に、セネリオはいい表情をしない。

 そもそもの原因は、セネリオがアリエルを連れ回したのが原因。

 いくらイシュバールの生活に慣れてきたとはいえ、完全に溶け込んでいるわけではない。

 また知らないことの方が大きく、そのひとつが宇宙。

 神秘的な世界を見て感動していたが、セネリオが行った説明が難しかったのだろう、何度も首を傾げていた。

 それが風邪の原因のひとつではないかと考えたセネリオは、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 それに素人相手に小難しく説明してしまうのも、悪い癖であった。

「……看病、行こうかな」

「ク、クレイド自らですか!?」

「いけない?」

「いえ、そのような……」

 「寧ろ、そうしてくれると助かります」とは、流石に言うに言えない状況であった。

 それどころか彼女達も二人の仲の影ながら応援をしているので、これについて否定することはしない。

 セネリオが見舞い。

 アリエルが聞いたら、絶対に断るだろう。

 彼女の性格を理解しているからこそ、侍女達はセネリオの見舞いを内緒にする。

 行ったら、驚くだろう。

 そう、心の中で微笑む。

「見舞いって、何がいいかな」

「果物はどうでしょうか」

「果物……ね」

「彼女は、果物が好きなようです」

 侍女の意見にセネリオは「なるほど」と呟き、明後日の方向に視線を向ける。

 といって、どのような果物がいいのかわからない。

 セネリオは侍女に視線を向けると、適当に見繕って欲しいと頼む。

「代金は、後で支払う」

 セネリオからの頼みに、侍女は軽く頭を垂れる。

 今回はセネリオとアリエルの両方に関わりがある事柄で、これによって少し中が進展すればいいと考える。

 なんだかんだで、侍女達だけではなく、上の者も二人の関係がどのように変化していくのか、気になって仕方がない。