「あと、旅行に誘われたの」
しかし旅行に行くとなると、ミーヤを誰かに預けないといけない。
あの時は「行きたい」気持ちが先行してしまって、そこまで考えることができないでいた。
もし預けるとなったら、信頼している人の方がいい。
そうなると、いつも世話になっている侍女仲間が一番いい。
「クレイドの他に、ライアスさんとライアスさんの彼女も一緒に行かれるみたい。彼女さんって、どんな方なのかしら」
残念ながら、一度も会ったことがない。
同じ侍女同士なら、他の仲間から紹介されてもいい。
だが、紹介されたことがないので、別の職業に就いているのだろう。
と、アリエルは考える。
優しいのか。
怖いのか。
年齢は、いくつなのか。
様々な疑問が湧いてくる。
一緒に旅行に行く前に一度会っておきたいと思うも、セネリオに紹介してもらうわけにはいかない。
それならライアスに頼むのが一番いいが、ライアスはライアスで仕事が忙しい身。
誰に頼めばいいか考えていると、結局のところ侍女仲間に頼るのが一番いいと判断する。
暮らす場所が変われど、侍女達の情報収集能力が高いことには変わらない。
現に此方の侍女達も話が好きで、噂を集めるが上手。
セネリオの友人であるライアスの彼女くらい、知っていて当たり前だろう。
といって、今すぐに聞きにいくわけではない。
明日、仕事の途中で聞けばいいとアリエルは思うと、ミーヤの身体を掴み猫ちぐらの前に置く。
最初は珍しがっていた猫ちぐらだが、ミーヤはすっかり気に入ったのだろう、出入り口から中に入って行く。
そして中で身体を回転させると、出入り口からちょこんっと顔を覗かせた。
「お風呂入るから、待っていてね」
アリエルの言葉に、ミーヤは可愛らしく鳴く。
同時にミーヤは顔を引っ込めると、猫ちぐらの中で丸くなる。
敷かれている毛布が気持ちいいのか、機嫌がいい。
ミーヤの態度にアリエルは微笑を浮かべると、クローゼットからタオルと寝間着を取出し、風呂場へ。
最初はどのように使用していいかわからなかったが、今はすっかり操作方法を覚えたので一人で入浴することができる。
それに、お気に入りのシャンプーとリンスも見付けた。


