「は、はい」
返事を返すが、やはり後方が気になってしまう。
はじめて見た、見知らぬ世界。
それに惹かれるのは、至極当然。
「また、見られるよ」
後ろ髪を引かれるようなかたちでいるアリエルに、セネリオは声を掛ける。
彼の言葉にアリエルは後方を一瞥すると、その言葉を信じるかのようにシッカリとした足取りで、転移装置がある場所へ向かう。
「別の惑星(ほし)へ行く時、今以上のモノを見ることができる。宇宙は広くて、綺麗な場所が多い」
「楽しみです」
「アリエルが、好奇心旺盛でよかった」
「どういう意味でしょうか」
「色々と話せるってことかな」
しかしセネリオは、それ以上明確は回答を言うことはしなかった。
ただ口許を緩めながら転移装置に乗り込むと、手を振り早く乗るようにと促す。
セネリオが何を言いたかったのか気になるが、だからといって根掘り葉掘り聞き出せるほど、アリエルは無礼な人間ではない。
再び、あの感覚に陥る。
だが、多少は慣れたのだろう、後方へ倒れることはない。
そして宇宙空間から、地上へと戻った。
「ミーヤ。私、宇宙に行ったの」
その夜、アリエルはミーヤを膝の上に乗せながら、語り掛けていた。
ミーヤもアリエルの膝の上を気に入っているらしく、身体を丸めながら尻尾を振っていた。
そんな愛らしいミーヤの身体を撫でつつ、宇宙がどのような場所で、自分は知らないことが多かったと話す。
「クレイドも言っていたけど、宇宙って広いみたい。沢山の惑星があって、生き物が住んでいて……」
一度、言葉が止まる。
「仲良く、なれるかしら」
折角、異なる惑星の住人に会えるのだから、仲良くしたいというのは正直な感想である。
更にその惑星はどのような場所で、どのようなことが流行っているのか――
侍女仲間に影響されたのか、アリエルの好奇心はイシュバールを訪れた時以上に大きなモノになっていた。


