遠くへ行くとなると、それなりに物入りになってしまう。
今までセネリオから多くを貰っているが、それの返済の目途が立たない。
彼は「別に構わない」と言っているが、気分的な問題。
何も言ってこないアリエルにセネリオは、瞬時に彼女が「お金」について考えていると読む。
「全額、出すよ」
「い、いけません」
「何故?」
「た、大金かと……」
「言ったように、溜まる一方で使う暇がないんだ。それにどうせ使うのなら、気の知れた者同士の方がいい」
「で、ですが……」
「嫌?」
そのように聞かれると、アリエルは返答し難い。
それに心の片隅には「一緒に行きたい」という気持ちもないわけでもなく、それに宇宙からイシュバールを見たことによって好奇心が刺激された。
他の惑星は、どのような場所か。
どんな人物がいるのか。
言葉では行くことを否定していても、本音は新しい世界を見てみたいという気持ちの方が強かった。
「どのように、お休みを貰えばいいでしょう。ご旅行となりますと、長期になると思いますが……」
「世話係として連れて行く」
「それでしたら……」
アリエルが了承してくれたことに、セネリオは嬉しそうに頷くと、目に付かない位置で待機していたゼノを呼ぶ。
「お呼びですか」
「下に戻る」
「もう、宜しいのですか!?」
「彼女が疲れたようだ」
「それでしたら、下の者に連絡を――」
セネリオの命令を受け、一度ゼノは下がる。
ゼノと話し終えたセネリオは、アリエルがいる方向に振り返ると、彼女が宇宙空間を眺め続けていることに気付く。
余程この眺めが気に入ったのか、微動だにしない。
真剣そのもののアリエルにセネリオは柔和な表情を浮かべると、転移装置の所で戻ろうと声を掛けた。


