「アリエル?」
「は、はい」
「ボーっとしていた」
「その……色々と、難しく……」
思わず、嘘を付く。
しかしそれはある意味で、正しい嘘を言っていい。
流石のアリエルも限界が来たらしく、疲労困憊の状態。
本当はもっと多くのことを聞きたいのだが、いかんせん頭の処理が追いつかない。
それでも宇宙から見るイシュバールの美しさには惹かれるらしく、特殊ガラスに両手を付くと覗き込むようにして眺め続けていた。
「疲れた?」
「い、いえ……」
「無理はしない方がいい」
「無理なんて……」
「顔色が優れない。そのような表情をしている者を、研究室で多く見ているからわかるんだ」
セネリオに気を使わせてはいけないと隠していたが、完全に見抜かれていた。
こうなると何を言っても言い訳になってしまうので、アリエルは素直に「難しいことを聞いたので疲れた」と、話す。
「それは悪かった」
「いえ、多くのことを知りました。知らないことの方が多く、世界ってもっと広かったんですね」
「広いというか、かなり広い」
「どういう意味でしょうか」
「宇宙にはイシュバールのように、高い文明を築いている生物が暮らす惑星が点在しているということだよ。そういうことを言うと、またアリエルを混乱させてしまいそうだけど……」
と言いつつ、苦笑する。
ふと思い出したのは、旅行の件。
それについてセネリオは、アリエルに話す。
「あとはライアスと、ライアスの彼女が一緒だ。男二人と一緒だと、何かと気を使うだろう?」
だから、ライアスの彼女が一緒について来る――と、説明する。
そして計画している場所はイシュバールから離れた、別の惑星。
気候が安定し最高の場所なので、いい気分転換になるという。
突然すぎる計画にアリエルは目を丸くすると、真っ先に考えたのはお金だった。


