「わ、私は……」
「アリエルは慣れていないから、ちょっと気分を悪くしたのかもしれない。身体には影響はないから、安心していい。で、立てるかな。さっきまでふら付いていたから、心配なんだけど」
「だ、大丈夫です」
セネリオの腕によって支えられていることに気付いたアリエルは、反射的に距離を取ってしまう。
セネリオに、疲れさせるわけにはいかない――というわけではなく、支えられていることに羞恥心を覚えたからだ。
彼女にとって異性に、このように支えられたのは一度としてない。
だからこそ、このような行動を取ってしまう。
しかし彼女の心情を理解していない、というより女心を理解していないセネリオは肩を竦めて見せる。
「折角、助けたのに」という気持ちの方が強かったのだろう「平気ならそれでいい」と、残念がる。
「さあ、出よう」
「宇宙……ですね」
「そう」
促されるまま、アリエルはセネリオの後を追う。
宇宙とは、何か。
言い知れぬ不安感と、好奇心が入り混じる。
アリエルの目の前に存在したのは、一面の漆黒。
いや、それだけではなく、青白い光が美しい。
立ち尽くしているアリエルをセネリオが手招きし、見易い位置へ案内する。
アリエルはコクコクと頷くと、セネリオの側に立つ。
そして彼が指差す方向に視線を向けると、何かを発見する。
「あれは?」
「イシュバール」
「国の名前じゃないのですか?」
「国……というか、惑星の名前。で、暮らしている場所はこのように丸くて、自転を行っている」
「大地って、行き止まりだと……」
「行き止まりじゃないよ」
アリエルが暮らしていた惑星も丸く、一直線に歩き続ければいずれもとの場所に帰ってくることができる。
そして空が動いているわけではなく、惑星自体が動いていると説明するが、当たり前が当たり前ではない世界から来ているので、セネリオの話を簡単に理解できるものではない。


