その結果、人々の生活は豊かとなる。
それに「魔法」という言葉は、強ち否定することはできない。
宇宙には数多くの惑星(ほし)が存在し、全てを知り尽くしているわけではない。
その中の一つに、魔法を使う民がいるのではないか――と、セネリオは考える。
だからこそ、アリエルの発言を笑いながら聞いていた。
「いつもは一人で利用しているとか?」
「最初は誰かと一緒でしたが、今は一人です。ですので、到着するまで緊張してしまい……」
「今日は私が一緒だから、大丈夫だ」
セネリオの最高とも呼べる知能を持ち、同時に素晴らしい技術力を有していることを知っているので、今回転移装置を使用することに躊躇いを抱くアリエルも、安堵感の方が強かった。
それに事件や事故が発生したとしても、セネリオが解決してくれるだろうと考える。
ふと、ゼノの脚が止まった。
見れば、目の前に転移装置が設置されていた。
「ご一緒に宜しいでしょうか」
「構わない」
「では、失礼いたします」
本当はアリエルと二人で行きたいのだが、ゼノの立場があるのでこれはこれで仕方がない。
三人は、転移装置に乗り込む。
刹那、不思議な感覚に陥る。
これこそが、アリエルが言う「軽く意識が飛ぶ」というものだろう。
セネリオとゼノは乗り慣れているので特に違和感を覚えないが、数回しか利用していないアリエルは違う。
後方に倒れてはいけないと、転移する瞬間、セネリオはアリエルの背中に手を回し転倒を未然に防いだ。
まさに、一瞬の出来事。
彼等の身体は、上空に飛ばされた。
「アリエル?」
「ク、クレイド」
セネリオの言葉に、アリエルは半分飛んでいた意識を取り戻す。
思わず周囲を見回し、自分が今何処にいるのか確かめるが、視界に映るのは転移装置と複雑な機械。
キョトンっとしているアリエルに、セネリオは頬を緩ますと「ゼノは先に行ってしまった」と、伝える。


