だが、その意味にいまだに気付いていない。
それでもセネリオは、アリエルと出掛けることを選択する。
そのことで、今まで得られなかった特別な‘何か’得られる感じがしたからだ。
セネリオがアリエルを連れ向かったのは、イシュバールの民が〈港〉と、呼んでいる場所だった。
この場所から、一度空に上がらないといけない。
通常、他の惑星は地上に巨大な港を設置し、他の惑星からやって来る船を受け入れている。
しかしイシュバールは防衛の為に惑星全体を特殊なシールドで覆っているので、宇宙へ本格的に出る場合一段階踏まないといけない。
彼の説明にアリエルはコクコクと頷くも、何を言っているのか殆ど理解できなかった。
それでも未知の場所へと行けることに好奇心が疼くのだろう、いそいそとセネリオの後を追う。
その時、周囲が慌ただしくなる。
どうやらセネリオが来ていることに多くの者が気付いたらしく、目を丸くする者もいれば隣同士で何やら話しだす。
それ以上に目立ったのは、スマートフォンでの撮影。
それに一部の者は黄色い悲鳴を上げ、完全にパニック寸前であった。
「ク、クレイド」
「上に行きたい」
「それでしたら、事前に……」
姿を現したのは、警備主任。セネリオが来たことを耳にし、慌ててやって来たのだろう肩で息をしている。
「事前に言うと、大事になる」
「いえ、十分大事になっています」
警備主任の言葉に、セネリオは自分を眺めている者達に視線を合わすと、軽く手を振って見せる。
刹那、歓声が響いた。
この状況で、セネリオを注意できる者はいない。
いや、ライアスがいたとしたら、間髪入れずに注意を行っていた。
しかし警備主任がセネリオを注意できるわけがなく、表情が強張ってしまう。
「で、上に行ける?」
再度尋ねるが、相手はいい表情をしない。
セネリオからの頼みの場合、すぐに実行に移さないといけないが、どちらかといえば躊躇いの方が強くなってしまう。
今セネリオは一人で、護衛らしき人物が側にいない。
その状況で上に上げてもいいか、判断に困っていたのだ。


