頑張れ。

 上手くやってね。

 と、彼女達は二人に向かって囁く。

 勿論、大きな期待感を込めて。


◇◆◇◆◇◆


「雨……ですね」

「雨だね」

「生憎の天気です」

「雨は嫌い?」

「お掃除が、大変でした」

 「でした」という過去形に、アリエルが以前暮らしていた世界について考えていると気付く。

 此方の世界では雨が降り湿気が多くとも、それ相応の対処をしているので特に問題はない。

 しかしアリエルがいた世界では湿気対策もままならず、苦労していたことを彼女の話から知ることができる。

「今は?」

「とても便利です」

「それは良かった」

「この世界の物を持っていけたら、いいのですが……」

「無理だ」

「……そうですね」

 セネリオから何度か話を聞いているので、文明社会とそうでない社会の境界線についてアリエルは学習した。

 彼女が暮らしていた惑星(ほし)は〈未開惑星〉であって、高文明の物を持ち込んではいけないとされている。

 彼等が理解できない物を持ち込んでしまえば、文明の進化速度を意図的に弄ることになる。

 それに最悪の場合、持ち込んだ側がその惑星の絶対的支配者になってしまう。

 だから、法が存在する。

 暫くぐずついた空を眺めていたアリエルだったが、何かを思い出したのだろう口を開く。

 彼女が発した内容というのは、この世界が丸いものだというもの。

 勿論、これはセネリオから聞いたことで、いまだに信じられないという。

 彼女は、大地は水平で端が存在していると認識していた。

 その先は深い崖になっており、落ちたらひとたまりもない。

 そもそも宇宙という概念を持ち合わせておらず、天動説を信じている。

 だからセネリオの話を聞いた時、頭が混乱しおとぎ話を聞いているようだったと話す。