だからこそ、周囲はあれこれと世話を焼く。

 勿論、二人に気付かれないように。

「ドレス、買いに行かないと」

「ドレスって、スカートよね」

「当たり前じゃない」

「長いスカートなら、いいけど……」

「こういう式に参加するドレスって、みんな短いわよ。それに、長かったら可愛くないもの」

 それを聞き、アリエルは躊躇ってしまう。

 といって、式に参加したくないわけではない。

 オドオドとしているアリエルに仲間達は、殆どの女性が短いスカートを穿いているので恥ずかしいものではない。

 また、これをいい機会として挑戦するのも悪くない――と、背中を押す。

 それに元からアリエルは可愛くて美人なので、この機会を逃したら勿体ないと話す。

 また、ドレスを着ているアリエルの姿を見たら、好意を抱いてくれる人物が現れるのではないかと、遠回しでいう。

「そ、それなら……」

 いつものアリエルであったら「恥ずかしい」と言って拒否しているが、今日の彼女はどこか違う。

 心の片隅に「クレイドが喜んでくれるのなら」という思いがあったからこそ、挑戦することにした。

 アリエルの決意に、仲間達は一斉に口許を緩め互いの顔を見合わせた。


◇◆◇◆◇◆


 アリエル達がそのような話をしている頃、いつもより遅い時間にセネリオが起床する。

 徹夜で趣味に没頭し、寝たのが朝方ということもあって、この時刻での起床となってしまった。

 ベッドから起き上がり何度か欠伸を繰り返しながら、サイドテーブルに置かれている多ブレッド端末で今日の予定を確認する。

 今日は珍しく依頼はなく、それに行っていた仕事はひと段落ついているので、今日一日は完全にプライベートの時間で過ごすことができる。

 それなら二度寝も考えられるが、部屋から出ていかないと何かと心配される。

 特に父親から小言を言われると厄介なので、セネリオはベッドから下りると機械に命令しカーテンを開く。

 と同時に、幾つもの雨粒が窓に打ち付けていることに気付く。

 生憎のぐずついた天気にセネリオは肩を竦めると、眠気覚ましにシャワーを浴びに向かうことにした。