ミーヤの診断が終了し、出た結果は「特に異状なし」。
引き続いて行われたのは、飼い主の登録。
イシュバールのペットに義務付けられているのは、首元に飼い主の名前と連絡先を記したチップを埋め込むというもの。
それを聞いたアリエルは、どれほど痛い思いをさせないといけないのかと反論しそうになるが、だからといって登録を拒めばミーヤを飼うことができない。
とうとうミーヤを見ていられなくなってしまったのか、アリエルはガラスの側から離れると、部屋の隅で無事を祈る。
無理に今のミーヤを見せてもアリエルを悲しませるだけと、セネリオは一人ガラスの向こう側を眺めながら登録が完了するのを待つ。
その間もミーヤは身体を弄られるのが嫌なのだろう、鳴き声を発し抵抗し続けるも、チップを首元に埋め込まれた瞬間、急に大人しくなる。
「終わったよ」
「ミ、ミーヤは」
「無事だ」
「よ、良かったです」
「迎えに行くといい」
「はい!」
嬉しそうにアリエルは返事を返すと、駆け足でミーヤを迎えに行く。
その後に続くかたちでセネリオも退室すると、ミーヤを抱き締めているアリエルの姿を目撃する。
どうやら隣の部屋に立ち入る前にミーヤと再開できたのだろう、一人と一匹は感動の対面の真っ最中だった。
ふと、一人の人物がセネリオに歩み寄る。その者は先程の獣医で、ミーヤの診察と登録終了を伝えた。
「お時間を要しました」
「いや、構わないよ」
「異常が見付からず、良かったです」
「見付かれば、適切な治療を行えばいい。だが、見付かったら見付かったで、悲しむだろう」
「生き物が、お好きなのですね」
「特に、猫が好きらしい」
「ですから、あれほど……」
獣医の話では、自分が飼っているペットを溺愛している者も多いが、彼女はそれに勝るとも劣らないという。
それにあれだけ溺愛されていれば無碍に扱うことはなく、幸せな人生を過ごせるかもしれない――
と、アリエルに視線を合わせながら、自身の感想を言葉として表す。


