一体、どちらを選べばいいか。
そのようなことを考えていると、セネリオが一人の医師を連れて戻って来る。
見知らぬ人物の登場にアリエルは考えを中断させると立ち上がり、セネリオとその者を交互に眺める。
「こ、この方は……」
「ミーヤの登録をやってくれる」
「よ、宜しくお願いします」
セネリオの紹介にアリエルは、深々と頭を垂れる。
そんな恭しい態度に委縮したのか、相手は苦笑しながら「そのように改まらなくてもいい」と、話す。
また、そのような態度を取られると逆にやり難いという。
それに彼自身、セネリオに頼まれ極度に緊張しているらしい。
「優秀だから、安心していい」
「ほ、褒めすぎです」
「若手のホープと聞いたが」
「そ、そのようなことはありません」
セネリオに褒められ嬉しい反面、どのように答えていいのかわからないらしく、完全にパニックに陥り声音が震えている。
普通であったらこの反応は「面白い」と取り笑いの対象となるが、セネリオは表情を綻ばしていても目が笑っていないことに、アリエルは気付く。
「ク、クレイド」
「うん?」
「その……ミーヤを……」
「ああ、そうだね」
あたふたしている獣医を不憫に思ったのか、アリエルが助け舟を出す。
アリエルの言葉にセネリオは彼女からミーヤを受け取ると、まだ落ち着きを取り戻していない獣医に差し出す。
しかし流石医師というべきか、ミーヤを受け取った瞬間、先程までの表情が真剣な面持ちに一変する。
「宜しく」
「畏まりました」
「わ、私は……」
「任せれば平気だ」
「できれば、側に……」
「任せれば平気」と言われてもミーヤのことが気になって仕方ないのだろう、アリエルは側についていたいと懇願する。
彼女の頼みに獣医はどうすればいいか迷ったのか、セネリオの顔を一瞥する。
するとできるものなら受け入れてほしいと言っているのか、セネリオが軽く口許を緩めた。


