巡り合いの中で


「では、どうすれば……」

「説明した通り、登録を行えばいいのです。ですがそれ以前に、どうして猫を飼っていることを黙っていたのです」

 しかしそれについて、アリエルは答えることはしない。

 俯きミーヤを抱き締めているアリエルの姿にセリアは肩を竦めると、侍女がペットを飼育してはいけない規約はないと教える。

 だから、飼いたければ責任を持って飼えばいい。

 と、セリアは伝える。

「す、すみませんでした」

「貴女は、真面目すぎるのよ。そこがいい点でもあり、悪い点でもあるの。もっと、物事をおおらかに考えた方がいいわ」

「……はい」

「この騒ぎについては、私の方から皆に説明しておきます」

「ク、クレイドには……」

「勿論、話します」

 アリエルにとってセネリオに知られるのが一番堪えるのだろう、急に表情が暗くなってしまう。

 それを見逃さなかったのはセリアで、彼女の立場上侍女の動向は耳に入ってくる。

 その中のひとつが「アリエルがセネリオと一緒に出掛ける」というもので、二人の関係が気に掛かっていた。

 セリアは、多くの予想を立てていた。

 だが、アリエルの反応で少しだけ理解する。

「クレイドは、お優しい方です。このようなことでは、何も仰らないでしょう。ですので、手続きを行いなさい」

「ですが、どうすれば……」

「明日、侍女の誰かを連れて行くといいでしょう。さて、話はこれで終わりです。部屋に戻っていいわ」

「わ、わかりました」

 アリエルはセリアに頭を垂れ退室しようとした時、空腹に耐えきれなくなったのかミーヤが鳴きだす。

 何とも切ない声音で鳴くミーヤにセリアは「病気なの?」と尋ね、何処か焦ったような表情を浮かべる。

「違います。空腹で……」

「それは、悪いことをしてしまったわ」

 セリア曰く「空腹とわかっていたら、このように話してはいなかった」という。

 何度も鳴き声を発しているミーヤを居た堪れなくなったのだろう、早く部屋に戻って食べ物をあげた方がいいと促す。

 また、後で子猫が食べても大丈夫な料理を持って行くと、約束してくれた。