猫の鳴き声に、多くの者が集まって来る。
その中に、アリエルの姿もあった。
(ミ、ミーヤ)
ミーヤが捕まってしまったことにアリエルは焦るが、内緒で飼育しているのがなかなか名乗り出ることができない。
しかし何度も切ない声音で鳴き、必死に助けを求めている姿を見ているとアリエルの心はきつく締め付けられてくる。
また、言い知れぬ不安感に襲われる。
アリエルは意を決し、ミーヤの名前を呼ぶ。
勿論、皆の注目を浴びる。
それでもアリエルは、再度名前を呼んだ。
「この猫は、貴女の……」
「はい」
「届はしてあるのですか?」
「い、いえ」
アリエルの返答に、相手は困惑してしまう。
すると騒ぎを聞き付けてやって来たのだろう、セリアが二人の前に進み出る。
捕まえられている猫と、委縮しているアリエルから何があったのか瞬時に理解したセリアは、このことは自分に任せてほしいとミーヤを捕まえている者に話す。
「そう、仰るのでしたら……」
アゼルから信頼を得ているセリアの言葉に、相手は素直にミーヤを差し出す。
セリア両手で優しくミーヤを抱き締めると、アリエルに視線を向ける。
一瞬「怒られる」と身構えてしまうが、怒られることはなかった。
それどころか「話があります」と言い、何処かに連れて行こうとする。
セリアの言葉にアリエルは返事を返し、後を追う。
と同時に、一ヶ所に集まっていた者達は解散した。
とある一室に立ち入ると、セリアはミーヤをアリエルに返す。
その瞬間、ミーヤは愛らしい声音で鳴き、大好きな主人に擦り寄る。
余程怖い思いをしたのか、甘えながらゴロゴロと喉を鳴らしていた。
「その猫は、どうしたのですか?」
「雨に打たれていて、可哀想だったので……」
どういう経緯(いきさつ)でミーヤを飼うようになったのか、アリエルは事細かに話していく。
その途中、セリアは黙って聞き続ける。
そして、アリエルが話し終えると「この世界でペットを飼う時に、行わないといけないこと」について説明し、このままではミーヤを手放さないといけないと話す。


