その時、セネリオ宛に通信が入る。
何事かと思いセネリオは通信相手に尋ねると、込み入った仕事が入ってしまったので、できれば手伝って欲しい――というものであった。
勿論断る理由はないので、それについてセネリオは快く承諾すると、通信相手は安堵の溜息を付く。
一通り会話を行った後、セネリオ側から通信を切る。
そして確認するかのように、ライアスの顔を一瞥する。
「……というわけだ」
「わかりました。セネリオ様をお呼びするということは、余程の仕事なのでしょう。それとも……」
「それとも?」
「攻撃でしょうか」
「それだったら、面白いな」
その後に続いたのは、二人の笑い声。
しかし、それは長く続かなかった。
「本当に攻撃されているのなら、こんなに悠長にはしていられない。もっと、騒がしくなっている」
「ですね」
「さて、呼ばれたからには行かないと」
「例のことは、話しておきます」
「ああ、宜しく」
言葉と共にライアスに見せるのは、柔和な表情。
だが、それは一瞬にして変化し、依頼者から「堅苦しい人物」と言われているセネリオに戻ってしまう。
その変化にライアスは恭しく頭を垂れ敬意を示すと、友からイシュバールの後継者に戻ったセネリオを見送るのだった。
◇◆◇◆◇◆
侍女としての全ての仕事を終えたアリエルは自室に篭り、今日あった出来事を思い出していく。
セネリオと買い物に行った。
思い出した瞬間アリエルの心の中に温かいモノが広がり、言葉では説明しにくい感覚に陥る。
勿論、セネリオと一緒に買い物に行けたことは嬉しかったが、それ以上に彼から「スカート姿」を見てみたいことを要望され、アリエルは混乱してしまう。
それも丈の短いスカートなので恥ずかしく、躊躇いの方が強い。
それでも心の片隅には「喜んでくれるのなら」という思いもないわけではない。


