いつになく追及が厳しいライアスに、セネリオは何とも表現し難い表情を浮かべるしかできない。
どのような人物であれ臆することなく物事を言うセネリオだが、ライアスに掛かれば形無し状態。
また、言われても仕方がないことだと諦めているのか、いつもと違い元気がない。
セネリオの反応にライアスは、内心「言い過ぎた」と反省したのか、先程の言動を謝罪しようとするが、それを遮るかのようにセネリオが口を開く。
そして発せられた言葉というのは、自分好みのリゾート地を捜してくるというもの。
勿論、ハッキングは行わないと約束する。
「いい場所を探す」
「楽しみにしています」
「だから、彼女を――」
「わかっています。事前に、このことを――」
当初、自身の彼女を連れて行くことを渋っていたが、頑張って仕事をしている彼女にたまの休日を――と、ライアスは考える。
何よりリゾート地に行けば、アリエルはセネリオと一緒にいることが多い。
よろしくやっている二人を遠巻きで眺めているのは気分的に重く、それなら自分も彼女を連れて行った方が気分的に何倍も楽。
というのが口には出さないが、ライアスの本心のようなものだった。
「仕事以外で、ライアスと遠出は久し振りだ」
「セネリオ様は、いつもお忙しいですから」
「依頼が多いからね。まあ、その依頼をこなしていかなければ、稼ぎにはならないんだけど」
「相変わらず、ご使命が多いようで」
「面白い依頼は、少ない」
「セネリオ様が満足する仕事は、滅多に……」
ライアスが言う「セネリオが満足する仕事」というのは、彼が持つスキルが遺憾なく発揮される仕事。
同時に、心躍る何か――が附属されていないと、満足する仕事に値しない。
だから多くの者がセネリオを「気難しい人物」と考え、無礼がないように細心の注意を払う。
しかしセネリオの性格を熟知しているライアスに言わせれば、セネリオは気難しい人間ではない。
引きこもり体質の持ち主だが、根は優しくイシュバールの民から絶大な信頼を得ている。
現にライアスは、セネリオの悪い噂や不平不満を耳にしたことはない。
ただ唯一の欠点は恋愛に疎い面であったが、アリエルが彼の前に現れたことによって徐々に改善に向かっている。


