「アリエルだ」
「彼女……ですか」
「一人で、寂しいだろう? それにもう一人異性がいれば、話し易い……と、思ったりもした」
女性を気遣う――というセネリオには珍しいというか有り得ない言動であったが、ライアスは決して驚くことはしない。
それどころか知らないところで成長しているセネリオに、嬉しさを覚えるほどであった。
これこそが恋愛の第一歩を言うべきか、アゼルの側近が耳にしたら感涙に咽ぶ。
しかしこの提案について、ライアスは即答できないでいた。
自分は「護衛」の名目でついて行くことは可能だが、彼女は科学者として仕事を行っている。
重要な仕事をしているのなら、それを優先しないといけない。
何より、彼女の意志を第一に考えないといけなかった。
「返事は、後で……」
「多分、平気」
「ですが、仕事が……」
「多くの者達が、優秀だよ」
「まさか、セネリオ様……」
「いや、それはない」
「まだ、何も言っていません」
「権力の行使だろう」
「……はい」
「安心していい。こういうことでは使わないし、使いたいとも思っていない。それにすぐ行くわけではないし、スケジュールが調整できる日を選ぶことにするよ。その方が、いいだろう?」
本来であったら権力を行使し、勝手に日程を組むことも可能だが、セネリオは決してそのようなことは行わない。
権力を使っても信頼を得られないことを知っており、一番の理由はライアスとの友人関係を崩したくないからだ。
だからこそ相手側の意見を尊重し、それに従う。
不敵な笑みとは違う純粋なセネリオの笑顔に、ライアスも頬を緩める。
仕事関係で多くの惑星(ほし)に出向くことは多いが、このように完全プライベートは殆どない。
ライアスもセネリオと一緒にプライベートな時間を過ごすことが楽しみとなったのだろう、久し振りに泳ぎたいと話す。
一方セネリオは、リゾート地で受けることができるサービスを一通り受けてみたいと言い出す。
これこそ引きこもりの反動というべきか、珍しく行動的なセネリオにライアスは驚愕するが、リゾート地にまで行ってまで引きこもって趣味に没頭――というのはおかしい。


