「何でもない。バス代持ってる?」

「あっ、はい。友達に借りました。あ、押さなきゃ」

と言って、降車ボタンを押す。




しばらくしてバスが停まる。


「ほんとに、今日はありがとうございました!」
降りる準備をしてそう言う。

「おう。またな。」




バスを降りて、家までの道のりを歩く。

("またな" かぁ~!何かとっても嬉しい!)
ルンルンしながら家へ向かう。



「ただいま~」

「あら、おかえりなさい~。今日は機嫌良さそうね。良いことあったの?」

「え!何にもないよ~」

「ふふ。恋?」

「恋だと?! 日南子、かっ、彼氏できたのか?」

お父さんが慌てたように言う。


「だから、そんなんじゃないってば!」
ちょっと怒ったようにいう。

「はいはい。ご飯食べるわよね?」
リビングには、良い匂いがたちのぼっている。


「うん!着替えてくる~」






ご飯も食べ終わり、部屋に戻ってきた。

「明日、返しちゃったらもう関わりは無くなっちゃうのかな…。由麻に相談してみよ!」


スマホを取り出して、由麻にLINEする。

『ねぇ、由麻。明日返しちゃったら、中山先輩との関わりって消えちゃうと思う?』

送ったらすぐに既読がつく。

『そりゃそーでしょ。でもさ、終わらせたくないんでしょ?』

『うん。どうしたら良いと思う?』

『連絡先聞けばいいじゃない。』

(連絡先。恥ずかしくて聞けないよ!)


『恥ずかしくて聞けるわけ無いよ!』

『そんなこと言ってられないでしょ?
ん~、ひなお菓子作り得意よね?お菓子と一緒にひなの連絡先入れとけば?連絡くれるかもよ?』

『あっ、それいい!そうしてみるね!ありがとうー!』