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「新入生入場、拍手でお迎えください。」
今年の新入生は26人ほど。
公立高校にしては少ない方だと思う
しかし、例年20人程度の中で比べたら多い方だ。
「学校長挨拶、吉田学校長。……起立!」
ーーガタッ
新入生と在校生、そして教員が一斉に席を立つ。
入学式の挨拶ともなれば長くなるのは予測済み。定型文を聞き流す覚悟の表れとして、僕は欠伸を噛み殺した。
「新入生の皆さん、また、保護者の皆様。丸井第一高等学校への入学、まことにおめでとうございます。我が校は70年の歴史を持つ、伝統ある高校としてーー……」
どこの学校でも、自校の歴史や伝統、校訓を並べるのは当たり前の話で。
マズイ。立ったままでも寝れそうだ。
「以上」
「礼! 着席!」
ーーガタッ、……ガタッ
あ、軽く意識が飛んでいた。着席の遅れ、バレてなきゃいいけど。
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入学式
それは皆が皆、様々な思いで臨むものである。と思う。俺は。
新入生はこれからの学校生活に向けての意気込みを胸に、
2、3年生は、新入生の顔合わせや、可愛い子さがし、かっこいい子探しなどもあるだろう。
現に隣のやつは必死でさがしてるわけで…
しかし、僕も一人女の子に目を奪われた。
やはり俺も男だ。否定はしない。
その子は、
165くらいの細くて綺麗で、髪はショート、小顔でモデル体型。それでいて、男気がありそうな感じの顔だ。ど真ん中ストライク
とても惹かれた。
つまりは、一目惚れしてしまったのである。
しかし、恥ずかしい話、高校二年生である自分は、はっきりとした彼女というものは、今まで出来たことはなかった。
そうして彼女を好きになった僕はまず、話す口実探しを始めた。
彼女の好きなものや、好きなことなどを周りに聞いたりした。
わかってきたのは、
運動が好き
恋愛経験なし、というより恋愛に興味なし
こりゃ強敵だ

そこで私はまず、同じ部活に誘ってみることにした。運動が好きなのだから部活はするだろうという算段のもと。
何度か話し、顔合わせをし、一年生の知り合いに紹介してもらい、
部活に誘っていった。
すると彼女は同じ部活に入ってくれることになった。
この時点で私はとても浮かれていた。
夜も眠れなくなり、考えることはいつも彼女のことばかりになっていた。
あわよくば付き合いたいなどという気持ちもあったが、嫌われたくなかったので、行動に出すことはできなかった。
なにせ、恋愛に興味がないんだから。
そうしていると、私は考えてることを隠せないもんだから、周りにもばれ、
ついには彼女とそういうのに興味がない人以外の学校全員が知る話となってしまった。

この時ばかりは、彼女の興味関心のなさにとても感謝した。
しかし、気付いて欲しかったという気持ちもあった。そうすればあちらも自分を見てくれる気がしたからである。
まぁ無理だろうが。
そうこうしているうちに、7ヶ月が過ぎた。
早いものだ。
その間、私はいろいろ考えた。
告白しようかどうしようか、自分なんかがオッケーしてもらえるわけがない、でも、気持ちは伝えたい、そういう気持ちでずっともやもやしていた。
そうすると、ストレスがとても溜まってしまう。
ストレス解消に本でも読もうなら、ほとんどが恋愛のからんでいるから、もっともやもやしてしまった。
そこへ、友人から電話がかかってきた。
「明日、あのアニメの映画公開日だけどどうする?」
そうだ!明日はそうだった。
「お前んち泊まっていい?」
「たぶんいいよ」
「わかった、ありがとう」
そして、友人の家に泊まりに行き、そのまま映画をみにいった。
私の大好きな映画の公開日に、その映画を観れてとてもいい気分だった。
今の気持ちのまま振られても、落ち込まないと言う意味のわからない自信が支えになり、
その日の夜7時、彼女に電話で思いを伝えた。ノリで…
今思うと自分でもなにやっているんだと思う。しかし、やってしまったことは仕方ない。
090-⚪️⚪️⚪️⚪️ー⚪️⚪️⚪️⚪️
三回呼び出し音がなって相手が出た。
「あ、あの、、、いまいい?」
「はい、大丈夫ですが、なんでしょう」
「あのさ、、、学校楽しい?」
「?、はい、それなりに」
違う、こんなことを言いたくてわざわざ電話してるんじゃない
「そっか、部活は?」
違うんだよ
「どうしたんですか?」
「えっ、いやー、ハハハ」
早く言わなきゃ!
「大丈夫ですか?」
そりゃそうだ
「あ、あのさ」
「はい」
「冗談じゃないから笑わないで聞いて欲しいんだけどさ」
「はい」
「あの、、、入学式の時に初めて会って、いや、みたのか?いいや、見てとても惹かれました。」
「はい」
「好きです、とても好きです、付き合ってください!!!」
あーあ、言ってしまった。
「あはははは」
!!!
「え?」
「はははははは」
「え?え?」
なんか言ったか?
「いやー、なんか先輩態度がおかしいし、とっても神妙だっから何かと思えばそんなことだったんですか」
「そ、そんなことってなんだよ」
「いいえ、すいません、、、はっはっは」
男顔負けの大笑い
「えー」
「えーと、すいません、付き合えません」
「えーーー!!」
ほらね?予想通りだ。
今夜は素直に涙で枕を濡らそう。
「嘘です。」
!!!は?
「えーーーーーーー!!!」
「こんな私でよろしければ、よろしくお願いします」
「えっえっ、いいの?!」
「嫌ですか?」
「いや、そうじゃなくで(泣)」
「?」
「断られると思ってたから」
いつのまにかよくわからない涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
「断った方がいいですか?」
「いいえ!とんでもない。よろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」
「いやー、マジかー」
「何がですか?」
「いや、まさかオッケーしてもらえるとは思わなかった。
なんか顔が熱いわ」
「ふふふ、かわいいですね。」
ッ!怖っ!これは・・・本当に強敵だ。

こうして好きな映画の公開日に、好きな女の子と同じ時間を歩み始めることができたのである。
なんだがアニメみたいな話だ。
まぁ、アニメのテンプレでは、この後恋敵が現れるか、彼女が実は幼馴染かのどちらかだ。
翌日、クラスでは、その話題で持ちきりだった。
というのも、告白が成功した直後、親友に電話して話したところ、みんなに回しやがったのである。(ありがとう)
そして、だんだんと学校全体に広がって行ったのである。
何かあると皆、その話題を出し、僕をいじった。
いじられてニヤニヤするのは止められず、しまいには「リア充爆ぜろ!」などと言われてしまった。
なるほど、彼女ができるというのは、これほどまでに気持ちのいいことなのか。
しかし、いいことばかりではない。
やはり、相手の気持ちを考えることも必要なわけで、その距離の取り方が難しかった。
自分が傷つかず、相手を傷つけない距離の。
1秒毎に距離が変化する的にボールを当てているようだ。
力を入れすぎるとあたらず、力を入れすぎると、何処か遠くへ行く。
人との距離の取り方の難しさを改めて実感した。
【ヤマアラシのジレンマ】というものがあるらしい。
これは、ヤマアラシという背中にトゲのある動物が、お互いの暖かさを相手に伝えようとするが、自分の背中のトゲで相手を傷つけてしまうという話だ。
全くもって滑稽な話である。
しかし、当たらずとも遠からずである。
全く、人というのはなんてめんどくさい生き物なのだろうか。

付き合ってすぐは、
お互いの事を知ることから始める。
しかし、相手を知るというのもまた、難しい話である。
僕は、考え始めるとネガティブに話を進めてしまうタチで、やはり最初は、告白してOKもらったことが信じきれず、他に彼氏がいて、遊ばれているだけなのではないだろうか、や、僕から見るととても綺麗な人だから、やはりもてているのだろうと思い、そう考えると、また夜も眠れなくなり、また寝不足の日々が続いた。
彼女の方は、なぜか熱が出て、三週間もひかず、その間とてもイライラしていた。

それと同時に、
ある問題が出てきた。
元々自分はお節介で、世話焼きで、人のことによく首を突っ込む性格なので、いろいろな問題に関わっていた。
それが少し大きくなり、家出することになった。

ことの発端は、
なる
と言う女の子の相談事からだった。
なるとは普通に仲が良く、よく放課後などは遊んだりもした。
そんななるからの相談だったので、のったのだ。
話はこうである。
自分の母親が、自分に対する扱いがひどいというものだった。
この年頃なら良くある話である。
しかし、彼女の場合は、母が三人目だったこと。
これが
他の子との違いだ。
なんて複雑なのだろう。
なる可哀想だね。
皆が口を揃えて言った。
そうか?
言い方はひどいかもしれないがその程度のことは、世間では良くある話なわけで、
とりわけひどいわけでもないという風に、私は思う。
しかしそれでも、面倒事の中心には私がいる

私は主に相談されると計画を立てる役になる。
今回の計画は、2、3日家出をしてなるの母を困らせてみようということになった。
そうして、立てた計画はすぐ実行される。
結局4日間の家出の末、この問題は決着がついた。

もちろん、その家出の間も、彼女への連絡は欠かさなかった。

そしてもちろん、なるとそう言ったことは一切なかった。

しかし、やはりこれも原因にあるのだろうか。

三ヶ月経つ頃には別れ話が向こうから出た。

正直驚いた。

「なんで?」
「あなたの愛が重くて私では受け止めきれない。」
驚いた。
そんな風に思っていたことについてではなく、自分の、彼女に対する愛が重いいうことがあるのか、ということについてだった。

「気をつける」
「どういう風に?」
「何かそれらしきことがあったら、ちゃんと言って」
「めんどくさい」
「俺はあなたを好きになった。あなたに嫌われないためなら、自分を捨てる覚悟があってあの日、告白した。だから、これからはもっとあなたのことについて、気をつけて行く。だからめんどくさいなんて言わずに、あなたが好きな、俺にして。話さないとわからないから。」
「…」
「…」
「…」
「どうしたの?」
「なんでもっと早く言わなかったの?(泣)」
「は?」
おいおい、なんか泣き出したぞ。
「そのままのあなたを好きにならなきゃいけないと思ってたから、あなたがくれる愛を全て受け取ろうとした。だけど、やっぱり私には重くて。でも、あなたにとってはそれが普通だったから。三ヶ月我慢したけどやっぱり重くて。だから、だから別れようって言ったの。もっと早く、リクエストして言いよって言ってよ。」
ああ、そういうことだったのか。
全然気づかなかった。
「ゴメン」
「なんで泣かせるの?」
いや、えー…
「ゴメン」

そんなこんなで、また付き合うことになり、それからはよく喧嘩もしたし、仲直りもした。
そして、3月には、遊園地に遊びにも行った。