次の日俺は桐谷をみかけた




まぁ学校に通ってるんだからみかけるのはあたりまえだけど



そんなささいなことでも桐谷が気になってしょうがなかった



違うクラスなのでずっと桐谷を見れるわけではないが、移動教室のときやお昼休みのときなどはよくみかけた


あいつはだいたい1人でいた



だけどクラスで浮いてる感じはなく

いろんなやつから声をかけられていた


違うクラスのやつでも桐谷のことを知っていた

それぐらいあいつは学校では有名なやつだった




放課後桐谷をみかけた


桐谷は1人で帰り道を歩いていた




話しかけようかすごく迷った




昨日一緒に帰ったとはいえ、俺と桐谷は面識がない




それに男の俺が話しかけるのは変だと思われる






でもここで話しかけなかったら絶対に後悔する



俺は桐谷とふつうに話したいと思った



ふざけた感じで話しかけることもできる



昨日の藤木たちみたいにバカにした感じで近づけば別に変だと思われないだろう



でもそれじゃなくて、俺は素の俺で桐谷と接したかった




『桐谷』



そう思ったと同時に俺は桐谷を呼んでいた



桐谷が振り向いた



それが昨日帰った俺とわかり笑顔になった







『あっ唐沢くんだ。藤木くんのお友達の



『俺のこと覚えてたんだ』


『覚えてるよ だって昨日一緒に帰ってくれたもんね』





桐谷は笑顔でそう言った


『お前誰かと帰んの?』



『帰らないよ。いつも1人で帰ってるんだ』



『じゃあ一緒に帰ろう』



そう言って俺は勝手に歩きだした



なかば強引だったが、桐谷は『ありがとう』と言ってすごくうれしそうだ



『お前なんか部活やってんの?』



『やってないよ。帰宅部だよ』


『ふーん。帰宅部なんだ』



『唐沢くんは、サッカー部だよね』


『なんで知ってんの?』

『昨日帰ったとき、藤木くんたちと部活のことお話ししてたから』


『お前よく聞いてんな』


『うん!優ね、人の話しはよく聞くんだよ。みんなが好きなものとか、嫌いなものとかの話し聞くのってすごくおもしろいなって思うんだ』




桐谷は笑顔でそう言った


やっぱりこいつは変わってるなと思った


人と少し視点が違う



だけど、そんな桐谷をみてると俺はなぜかうれしかった







いつでも素でいる桐谷がみていてかわいかった



俺はいまここで話しかけたことを本当によかったと思った



『唐沢くんの好きなものってなにー?』


桐谷が俺に聞いてきた


『俺の好きなもの?好きなものか・・・
食べ物とかだと、ラーメンとかが好きだけどな』


『ラーメン好きなんだ!おいしいよね』



『ほかに好きなものって言ったら・・・
空かな』



『空?』



『そう。空。なんかさ、空ってみててすごく落ち着くんだよね。明日もがんばろうって気持ちにさせてくれるんだ。
だから、空すごく好きなんだよな』



『たしかに、空ってきれいだよね!
優も好きだよ。空。
じゃあさ、今度みにいこう!空』

『空を?』



『そう!いままでよりもきれいな空を見に行こう。2人で』











2人でって言われた瞬間俺はすごくうれしかった


たぶん桐谷は深い意味で誘っているわけじゃない


単純に友達感覚として誘っていると思う



それでもすごくうれしかった




俺の好きなものにこんなにも興味をもって話してくれるのがうれしかった






いま俺はここで、うんと言いたかった


見にいっても良いよと


でも


『ばーか。みにいくわけないだろ』



俺は少し笑ってそう言った





少し桐谷をいじめたくなった



『そんなー みにいこうよー』


『桐谷とは絶対にいかない』





『ひどいー!』



桐谷は、ぷくーと顔をふくらせている





こいつは本当に変わってんな



だけどやっぱりおもしろい



『空はダメだけど、ほかのところなら行ってやっても良いよ』








俺はまたいじわるく言った








『本当に!』



『うん。良いよ』



『やったー!すごくうれしい!』





桐谷は本当にうれしそうだった





それをみてる俺もすごくうれしかった





あんなにいじわるな言い方したのに
こいつは本当に素直だな





桐谷は、どこいくー?どこいくー?と
ずっと言っている





『どこでも良いよ。お前どこいきたいの?』




『優はね・・・ 映画!』


『映画?』


『うん!映画が良いな』



『じゃあ、映画みにいってやるよ』




『本当に!やったー!』




桐谷は笑顔だった






本当にうれしそうだった





俺があんなに上から目線で誘ってんのに本当に素直だな。お前って





桐谷はまだ笑っている




俺も笑った












俺こいつやっぱり変わってると思うわ



すげーバカだなって



だけど、それぐらい素直でさ



天然で



笑顔がめちゃくちゃかわいいの





俺もっと桐谷のこと知りたいよ




桐谷優って存在をもっと知りたい






俺の気持ちを映し出してるかのように



空はすごくオレンジ色だった