その日サッカー部は少し早めに終わった

いつもより早く終わったことにテンションが上がったまま、下駄箱にむかった

下駄箱にいくと、玄関のところに男子がたまっていた

まわりにひびきわたる声でゲラゲラと笑っている

その男子の集団が、仲の良い藤木と山本と早見であった

藤木は中学のときから仲の良い友達だ

高校になって違うクラスになってしまったが、部活終わりにいつも一緒に帰ったりしている

『あれ 唐沢じゃん』

藤木が俺にきずき声をかけてきた

『お前もこっちこいよ ! おもしれえから』

藤木が手招きして俺を呼んでいる

見ると、男子の集団のなかに1人女子がいた

桐谷優だった

『早く来いよ! 唐沢』

藤木たちが呼ぶので、俺はみんなのところにいった

そのときも桐谷は笑っていた

『唐沢 こいつおもしれえんだよ』

藤木が桐谷の方を指差しながら言った

『こいつ クラスのなかでも変わってるんだよ いつも笑ってるしさ 1人でぶつぶつ言ってるし』

藤木がニヤニヤしながら言った

『こいつ本当気持ち悪いよな すべての行動がさ いや。存在自体が気持ち悪いか』

早見の言葉に、みんな笑った

藤木と早見は桐谷と同じクラスなので
桐谷のことがよくわかるのだ

『唐沢 お前桐谷と付き合ってやれよ
こいつ、彼女いないからさ』

山本がニヤニヤ笑いながら俺に言ってきた

『付き合うわけないだろ!こんな気持ち悪い女』

俺の言葉にみんなが笑った

ひどい言葉を言ってしまい、どうしようかと思ったが、桐谷の方も笑っている

気にしてる様子はなさそうだ

桐谷と話すのは初めてだが、遠慮ない言葉が普通にでてしまう

これは、桐谷が置かれてる環境のせいでもあるのだけれど、それ以前の問題のような気がする

なんか言いやすくて、なんでも本音言えちゃうみたいな

桐谷にはそういう雰囲気があった

いや、いつも笑っている時点でそうなのかもしれないけど

『唐沢〜 本当のこと言うなよ 』

藤木は、桐谷のことを完全にバカにしている

こんなに言われても桐谷は笑っている

普通だったらキレてるぞ

桐谷にはプライドってもんがないのか

『唐沢 みんなで一緒に帰ろうぜ』

『うん。 別に良いけど』

俺は藤木たちと帰ることになった

桐谷も一緒だ

帰ってるときも桐谷は藤木たちにバカにされていた

言葉だけじゃなく、バックを投げられたりしていた

それでも桐谷は笑っていた


嫌な顔ひとつ浮かべずずっと笑っていた


家に帰っても俺の頭のなかには桐谷がはなれなかった


桐谷という1人の人間が気になってしょうがなかった



あいつのことをもっと知りたくなった


このときの俺はまだきずかなかった



この気持ちがやがて恋にかわることを