ロスト・クロニクル~前編~


「本当のところは、そうなんじゃないか?」

「ラルフは、どんな形で死にたいのかな?」

 爽やかな笑顔で、脅しにかかる。

 ここまで言われて黙っている人間など、まずいないだろう。

 もしいた場合は、その人物は聖人君子。生憎、エイルは聖人ではない。

 するとラルフにいくつかの選択肢を与えていくが、それら全て十代の少年が発して良い台詞ではなかった。

「うっ! そ、それは……」

「ハーブ園で使うはずだった魔法未発動で終わってしまったから、あの魔法でもいいんだけどね」

「冗談だろ?」

「冗談に思える?」

 明らかに、目は笑っていた。

 エイルは、やると言ったら必ず物事を遂行する性格の持ち主なので、強ち嘘ではい。

 だからといって、教室内の魔法使用は禁止。

 そのことに気付いたラルフは、強く出ることにした。

 しかし、それは無駄な抵抗に終わる。

 やはり生半可の知識では、エイルに勝つことはできない。

 それどころか反論したことにより、刺と毒が倍になってラルフに襲い掛かってきた。

「誰も、この教室で使用するとは言っていないよ。使用するなら、特別室に行かないといけないし。勿論、きちんと許可を取ってから。其処で思う存分、数々の披露してあげる。魔法って、日頃の訓練が大切なんだ。だから、的は有難い。威力もわかって、勉強になるし」

 その瞬間、全身から血が引く思いがした。

 ラルフは。完全に忘れていた。

 実験や研究などを行う特別な教室では、魔法の使用が認められていることを。

 流石に一度言ったことは訂正できないが、訂正しなければ命の保障はなかった。

 それだけエイルの魔法は、強力すぎる。

「できたら、校庭がいいな」

「注目されてもいいんだ」

「そ、それは嫌だな」

「それなら、回復魔法を使ってあげるよ。これなら、安全だろ? それに、目撃者もいないしね」

「そ、それは……」

「言いたいことは、ハッキリと言おうね」

 何が何でも、エイルは回復魔法を使用したいらしい。

 それなら「回復魔法を専攻すれば」と思うが、そんなことは言えない。

 言った瞬間、何をされるかわからない。

 いくら鈍感なラルフであろうとも、機嫌が悪いことはわかる。

 先程からエイルは、眉間にシワを寄せていた。