それに襲われた理由など、ラルフはわかっていない。
「いきなり相手が攻撃を仕掛けてきた」簡略的に書けば、そうなるだろう。
だがそのような内容では、合格は貰うことはできない。
机の上に置かれているのは、白紙の紙。
渡されてから数十分、全くペンが進まない。
そのようなことよりも「何故、反省文を書かなければいけないのか」ラルフにとって、そちらの方が重要であった。
髪を抜かれ、ひどい目にあったのは自分。
それなのに、更に反省文という仕打ちを受けるとは――
まさに、踏んだり蹴ったりである。
「俺は、悪くない!」
叫んだところで、誰も聞いてはくれない。
逆にそれが空しさを増幅させ、惨めな一面を醸し出す。
泣こうが喚こうが、反省文から逃れる方法はない。
やはりここは、素直に書き上げるしかない。
「何、遊んでいるんだよ」
そんな独り芝居をしているラルフに声を掛けるのは、エイルであった。
その声に素早く反応したラルフは振り返ると、白紙の紙を差し出す。
だがエイルの持っている物に目が行った瞬間、その動きがピタリと止まった。
「エイル、それは?」
「お前と同じように、反省文を書くんだよ」
「嘘だろ!」
正直、信じられなかった。優等生として名が売れているエイルが、反省文を書くとは――
無言のままラルフの隣に座るその姿は、不機嫌そのもの。
メルダースに入学してから今まで反省文を書くということはないと思っていたが、まさかラルフを助けたことによりそれを書くことになるとは――
運が悪かったとしか言いようがないが、ラルフのように我儘を言わない。
機嫌が悪いエイルを横目に、ラルフは満面の笑みを浮かべる。
「エイルが反省文」どうやら、嬉しくて仕方がない。
今まで立場としてはエイルの方が上であったが、今回の件で同列に並んだ。
だが、ラルフは知らない。
反省文の書いた回数では、エイルに勝ることを――
「助ける為に使用した魔法が、いけなかった。威力を加減したが、それでも駄目だったようだ」
「俺の所為?」
「そう言いたいけど、鳥に襲われた理由もわからないし。今回は、諦めることにするよ。反省文は、勉強のひとつだと思えばいいし。何事も、体験だよね。これって、滅多に体験できるものではないし。ああ、ラルフは違ったね。このように、毎回反省文を書いているから」


