ロスト・クロニクル~前編~


「あれ? 静かだ」

「やっぱり俺か……」

「本当に、面白い体質だよな」

 頭を抱え、しゃがみ込む。そんなラルフの姿を見たエイルは、思わず言葉を失う。

 旋毛の周辺に、コインサイズのハゲができていたのだ。

 多分、烏に髪の毛を抜かれた影響だろう。

 それに、黒い羽毛が髪の毛に絡まっている。

 烏の総攻撃に身震いを覚えるエイルであったが、ハゲのことは内緒にしておく。

 このことを伝えてもよかったが、何だか可哀想に思えたからだ。

「本当に、何が原因なのか」

「俺が、聞きたいよ」

「まあ、これから気をつけよう」

 一体どのような理由で、ラルフは襲われたのか。

 その明確な訳を知りたかったが、深くは追求しないことにする。

 調べたところで、理由などわからない。

 やはり「生き物に嫌われている」それが正しい答えだろう。

「これ提出して、終わらせよう」

「そうだね」

 思わぬ方向に進んでしまった、合同授業。

 提出したポーションのお陰で、エイルとラルフは合格した。

 そのことにラルフは大喜びしエイルに抱きつこうとするも、やはり寸前でかわされ地面に顔を激突してしまう。

 ふと、周囲が静まる。

 そしてある一点に、視線が集まった。

 次の瞬間、周囲が一斉に笑い出す。

 どうやらラルフのハゲを発見したらしく、生徒の中には腹を抱えて笑う者や指を指す者、様々な反応を見せていた。

「な、何?」

 指で示されている部分に触れてみる。

 その瞬間、ラルフの悲鳴がこだました。

 そんな反応に、周囲はさらに盛り上がる。

 ラルフは力なくその場に座り込むとペタペタと頭を触り、薄くなった髪を悲しむ。

「育毛剤、買いに行くか?」

「う、うん」

「じゃあ、今度の休みに」

 エイルは軽くラルフの肩を叩くと、慰めの言葉を言う。十代で若ハゲ。これほど、ショックなことはない。

 その時、授業の終了を知らせる鐘が鳴り響く。

 担当の教師達は生徒達を一箇所に集めると、授業の終了を告げ各教室に帰るように促す。

 しかしショックから立ち直ることができないラルフは、しゃがみ込んだまま。

 そしてシクシクと泣き出し、自身の身に起きた不幸を嘆く。