ロスト・クロニクル~前編~


 数分後、調合が完了する。

「どうした?」

「見つけたよ」

 使用していた道具を片付けつつ、その場に立ち尽くすラルフに声を掛ける。

 すると満面の笑みを浮かべ、探し当てたハーブをエイルに手渡す。

 確かにこれは、先程ラルフが捨てたもの。

 ハーブを受け取ったエイルは「危ないから」という理由で呪文を唱え、魔法を発動させる。

 刹那、ハーブは魔法によって生み出された赤い火に包まれ炭と化す。

 久し振りに魔法を見たラルフは歓声を上げると、もう一度見たいと頼む。

 だが「必要以外は使用しない」と、断る。

「そんなことより、終わったよ」

「おお! 凄いよ、エイル君」

「本当は、お前が調合しないといけない。ほら、これを提出すれば終わり。単位が貰えるよ」

「わーい。嬉しいな」

「まったく、気楽でいいな」

「だって、これで単位が貰えるし」

 ラルフの目の前に突き出されたのは、緑色の液体を湛えた小瓶。

 何だかんだ言いながら、エイルはラルフに甘い。

 その優しい一面に感動し抱き付こうと飛び付くが、寸前でかわされてしまう。

「酷い!」

「男に抱かれる、趣味はない」

 エイルが避けたことにより、ラルフは顔面を強打する。

 だが、こんなことで怪我をするような人物ではない。

 案の定何事もなかったかのように起き上がると、制服についた土埃を叩いていく。

「タフだな」

「それが、俺の自慢さ」

「フランソワーの件で、ラルフの肉体の強さを知ったよ。普通なら、死んでいてもおかしくはないからね。オオトカゲが持つ毒って、小動物を一撃で殺すほどの威力があると聞くし」

「あれは、自分でも驚いているよ。医者も同じことを言っていたし。ところで、何でこんなに鳥が多いんだ」

 ラルフの言葉が示す通り、二人の周囲には無数の鳥が集まってきていた。

 雀のような小さな鳥にはじまり、鷹のような大きな鳥の姿まであった。

 その種類は様々。複数の鳴き声が入り混じるハーブ園は、まるで鳥達の楽園のように思えた。

 逆に、それが不気味な一面を見せる。