ハリスを捜す為にハーブ園を駆け回るラルフを一瞥すると、徐に立ち上がる。
そして大きく息を吸い込むと、報告をすることにした。
しかし第一声を発しようとした瞬間、ラルフの言葉がそれを遮る。
絶妙なタイミングにエイルは舌打ちをすると、渋い表情を浮かべる。
ラルフとさようならできる切欠を失ったことがかなり悔しいらしく、同時に苛立ちに似た何かが体内から湧き出す。
「休憩中じゃないの」
「そっか、俺達が使用しているからか」
「会いに行けば」
「いやー、単位落とせないし」
どうやら頭の中には“単位”という二文字は、一応存在するらしい。
だが目の前に興味を示す物が現れると、一時的にそれを忘れてしまう。
何とも面白い思考の持ち主であると感心してしまうが、できるものならこのまま一生忘れていてほしい。
その方が、世の中の為になる。
「なんだ、覚えていたんだ」
「当たり前じゃないか」
「なら、どうしてハリス爺ちゃんを捜しに行ったんだ。授業中だっていうことを、忘れていないような」
「そ、それは……」
報告できないとわかった途端、容赦なく毒を吐く。毒を吐き散らせば、暫くの間ラルフが静かになるからだ。エイルは使用していた教科書を押し付けると、残りのハーブを探して来るように言う。
「一緒に探そう」
「ポーションで使用されるハーブは、二種類しかないんだ。一種類は僕が見つけたから、残りはラルフが見つけろよ。嫌だというのなら、調合は手伝わないからな。あっ! そうそう。この前のレポートの件は、提出期限を延ばしてもらったから。それに今学期の必要最低限の単位は、修得できたよ。これで、ゆっくりと夏休みを迎えられる。そういうことだから、頑張ってラルフ君。やっぱり、自分の単位はきちんと自分で稼がないといけないし」
「つまりエイルは、この授業を落としても平気ってこと? う、嘘だよね。嘘だと、言ってくれ」
「いや、本当だよ」
その言葉に続き、余裕たっぷりの表情を浮かべる。
たまたま今回、ラルフと組んでやった。昼食前にクラスメイトと話していた中に「ボランティア」という言葉があったが、本当は博愛の精神でボランティアを行ったわけではない。
そもそも、エイルはラルフに見せる優しさなど持ち合わせていない。


