「彼女に会いに行くんだ」
「お時間をお考え下さい」
「別にいいじゃないか」
ミシェルが会いに行きたい相手というのは、勿論シェラだ。だが、ルークが言っているように時間が悪い。今、シェラは就寝中で、このような時間に女性の部屋に行くのは失礼であり無礼な行為。そのことを細かく説明していくルークだが、一方ミシェルは説明を小言と捉え機嫌が悪い。
「何故、行くのですか」
「会いたいからだ」
「そのような理由で……」
いい歳をして、何を考えているのか。ルークはミシェルの我儘な発言に、頭痛に悩まされた。これが自国であれば彼の我儘は通用するが、この国は彼の国ではない。エルバードがクローディアを表面的に支配しているとはいえ、何でも思い通りに行なっていいものではない。
その点も、ミシェルに言い聞かせていく。すると彼の説明を曲がった方向に受け止めてしまったのか、衝撃的なことを言い出す。彼が言い出したこと、それはすぐにシェラと結婚すれば済むという。彼の大胆な発言にルークは、何と言葉を返していいのかわからなくなってしまう。
確かにルークは、ミシェルがシェラを娶りたいと考えていることは知っている。だが、相手は12歳。年齢的に早いと、エルバード国内でも意見が出ている。また周囲から「ロリコン」と呼ばれていることに、本人は気付いているだろうか。いや、この状況では気付いていない。
自身の主人の我儘に、ルークは溜息を付いてしまう。しかし、この我儘を見逃すわけにはいかない。ミシェルの父エルバード公から、息子の我儘を見張ってほしいと頼まれているからだ。
ルークは再度溜息を付いた後、厳しい表情を作りミシェルにシェラのもとへ行ってはいけないと諭すが、ミシェルはルークの説明を聞き飽きているのだろう、視線は明後日の方向へ向け人差し指で頬を掻く。更に早く説明を終わらせろと言っているのか、時折欠伸を繰り返す。
「聞いておられますか」
「……わかったよ。お前がそこまで言うのだから、今日は行かないことにするよ。全く……煩い」
素直に聞き入れたと思っていたが、最後の最後で本音を言ってしまう。このような人物が将来エルバード公国を背負うのだから、周囲の嘆きの言葉はわからなくもない。正直、ルークも心配であった。そしてシェラのもとへ行けなかったことが相当不満なのだろう、ミシェルは不機嫌そのもの。


