ロスト・クロニクル~前編~


 気を付けろ。

 あの時、危険性の面で気を付けろと言われたのではないかと思っていたが、彼と対面し会話をすると別の意味を持っていたと気付く。そして、フレイが言いたかった真の意味を知る。

「貴方は……」

 どうして其処まで冷静でいられるのか。エイルは心の中で問う。普通、支配する側は横暴に振る舞い、支配する側を好き勝手に弄くる。また、無理難題を押し付け相手の反応を楽しむ。彼が守護しているミシェルがいい例であり、他の者達も同じである。しかし、ルークは違っていた。

 変わっている。

 それが、ルークに対しての印象。

 いや、変わっているというのは偏見か。彼は、普通の人物より器が大きいというのが正しい。ルークを見ていると自分の未熟さを知り、おかしな質問をしてしまった自分が情けなくなってくる。

「剣は使えるか?」

「そこそこは……」

「師は、フレイ殿か」

「はい」

「そうか。フレイ殿もそうだが、君ともいつか手合わせをしてみたい。フレイ殿のご子息の実力はどれほどか……」

 確かに父親から剣を学んでいるが、実力は高い方ではない。一方ルークはミシェルの守護者をしているのだから、実力は相当高い。そのような人物と手合わせしても結果はわかっており、下手すれば怪我では済まされない。

 しかし、手合わせしてみたいというのが本音。それが無謀な挑戦というのもわかっているが、自分の実力が何処まで通じるか知りたかった。

「僕は……」

「受けなくていい」

 エイルの言葉を遮ったのはシード。彼は今まで二人のやり取りを聞いていたのだろう、彼の目付きは鋭い。

「立ち聞きとは、いい趣味ではない」

「誰であろうと、手合わせを願うのもいい趣味ではない。それに、彼は私の部下……連れて行く」

 そう言い残すと、シードはエイルの背中を押しルークの前から立ち去る。逃げるように立ち去る彼等の姿にルークは、手合わせできないことを残念に思っているのか肩を竦めていた。廊下の角を曲がった瞬間、エイルは「隊長」と、呼ぶ。その声にシードは足を止めると振り返り、エイルの頬を叩いた。