「誰かに似ている」
彼の言葉に、エイルの身体が反応を示す。ルークはその反応を見逃さず、次にエイルの名前を尋ねた。
「エイル・バゼラード」
嘘を付いても、ルークは簡単に見抜いてしまう。それなら、素直に名前を名乗った方が得策だった。そしてルークが興味を示したのは、エイルという名前ではなくファミリーネーム。バゼラードという名前は隣国でも有名なのかそれともフレイ自身が有名なのか、エイルはルークを一瞥する。
「あの方のご子息か……」
「父をご存知で?」
「勿論」
ルークが父親の存在を知っているということに、別に驚く素振りはない。フレイが有名というのは、勿論知っている。そして有名だからこそ敵も多く、存在そのものを疎ましく思っている大勢いる。
果たして、ルークはどうか――
反射的に身構えた。
「尊敬している」
「尊敬?」
「いけないか」
「い、いえ……」
まさか「尊敬」という言葉が返ってくるとは予想できず、エイルは返答に困ってしまう。エイルの態度にルークは微笑を浮かべると、どうして自分がフレイを尊敬しているか話していった。
尊敬は一種の憧れ。フレイは武人として尊敬しており、できるものなら一度手合わせしたいという。彼の言葉にエイルは、敵対している国の者を尊敬していいのかと問う。その質問に対しルークは愚問とばかりに笑い出し、そのような理由で差別をするのかと逆に言葉を返されてしまう。
「それは……」
「素直に尊敬できる人物は尊敬できる。君はどうなのかな? 尊敬できる人物は、いないのか」
「いえ、父を――」
「あの方は、素晴らしい」
エイルの母国クローディアとルークの母国エルバードは、いい関係を築いてはいない。今、クローディアはエルバードが統治しているといって過言ではないので、エルバードの者に憎しみを抱いている者もいる。その中で抱く尊敬の念。ふと、エイルはフレイの言葉を思い出す。


