裏を返せば、アルフレッドにはその部分しかいい点がないということになってしまう。何か裏があるのかと考えてしまうが、人生経験が甘いエイルが彼等の考えを見抜くことはできない。
なら、人生経験が豊富のフレイに聞くのが一番妥当だろう。といって、全てを批判しているわけではない。また、最終的な結論を出すのは父親に相談してからでもいい。エイルはアルフレッドを一瞥すると、肩を竦めていた。
◇◆◇◆◇◆
その夜、エイルは運命の交差を体験する。それはいい意味での交差ではなく、悪い意味での交差。エイルが出会った相手というのは、ルーク・ライオネル。彼は、公子ミシェル・エルバードの守護者だ。
気を付けろ。
油断するな。
脳裏に、兄の言葉が過ぎる。
ルークは足を止めると、エイルを無言で眺める。そしてエイルという存在に興味が湧いたのか、彼が口を開いた。
「見慣れない顔だ」
「新人です」
「新人? ああ、残りの一人か」
「はい」
「なるほど。話は聞いている」
その後、暫く沈黙が続く。両者の間に漂う空気は張り詰められ、気の弱い人間であったら確実に気絶しているが、クリスティ相手に何度も経験しているのでエイルは堪え続けられた。
「いい目をしている」
「有難うございます」
「あの方にも……いや、何でもない」
何かを言いかけていたが、ルークは途中で言葉を止めてしまう。だが、彼が言いたいことは雰囲気で悟ることが可能だった。ルークが言っていた「あの方」というのは、守護者として護っているミシェル。そしてクリスティが「馬鹿公子」と呼んでいる、とんでもない人物。
あのクリスティが「馬鹿」呼ばわりしている人物の守護者をしているのだから、彼の苦労は想像を絶する。といって、相手に同情心が湧いたわけでもない。彼はエルバード公告の人間で、エイルにとっては敵そのもの。だから正直、褒められても嬉しいという感覚はない。


