ロスト・クロニクル~前編~


 彼女からの説明を聞いた時、エイルは激しい後悔に襲われてしまう。剣の練習相手はアルフレッドではなく、彼女に頼めばよかった。彼女はアルフレッドと違い、先生のもとで学んでいることが何よりも大きい。

 自己流のアルフレッドの剣を自分の目で見たことはないが、彼の性格を考えると野性味溢れているだろう。フレイから剣の型を学んでいるエイルにとって、自己流のアルフレッドとの練習はきつい。早く彼女に出会っていれば――と思っても、約束を取り消すことは不可能に近い。

 エイルの考えに気付いていないシンは言葉を進めていくが、今は仕事中なので長話をしていると注意を受けてしまう。シンはエイルに片目を瞑って見せると、後で話そうと言い残し彼女も仕事に戻っていった。

(いい人だ)

 それが、シン・ファレルという人物に対しての第一印象。これでアルフレッドと同じ性格の持ち主であったら共にやっていく自信がなかったが、彼女は男っぽい一面を持っているが根は真面目。

 素敵な人物との出会いを提供してくれた女神に祈りを捧げた後、エイルは雑用を再開した。そして全ての雑用を終えたエイルは大量の資料を両手で抱えると、先輩の親衛隊のもとへ戻り資料を手渡す。

「これで宜しいでしょうか」

「早いな」

「慣れていますので」

「ああ、だから丁寧なのか」

 予想以上に丁寧に纏められている資料の数々に、満足そうに頷き返す。先輩の反応にエイルは、自身に課せられたはじめての仕事が成功したのだと確信する。これもメルダースで真面目に学んでいたことがよかったのだろう、厳しく鍛えてくれたメルダースの教師達に感謝する。

「ああ、これも頼めるか」

「これも同じですか」

「そうだ」

「わかりました」

「助かる。で、これだ。一応、他の者に頼んだのだが、いかんせん整理が不十分すぎるというか、雑そのものだ」

 先輩から手渡された資料の数々は先程と量は同じなのでこれなら簡単に終わると思っていたが、この資料を最初に整理した人物の名前を聞いた時、エイルの顔が激しく歪み心の中で毒付く。手渡された資料を最初に整理した人物は、何とあのアルフレッド。しかし彼が丁寧に整理できるわけがなく、彼の性格が前面に表れた整理の仕方は先輩達の頭を痛めた。