先輩の言葉に、エイルは反射的にアルフレッドの顔に視線を向ける。専用の仕事が存在しているというのにアルフレッドがこの場所にいるということは、サボっているという証拠。一方アルフレッドは痛い部分を突かれたのか、顔が引き攣り顔全体に嫌な汗が滲み出ていた。
「お前……」
アルフレッドの何ともわかり易い変化にエイルは情けない彼の行動に溜息を付くと、彼の代わり謝っていた。
「いや、君が謝ることはない。君は、隊長に呼ばれていたのだから。しかし、彼の場合は違う」
一定の口調で、アルフレッドの悪い部分を的確に指摘していく姿は実に堂々としている。流石、一流の親衛隊隊員というべきか、先輩から漂うオーラのアルフレッドはたじろぎ逃げ出す素振りを見せるがそれが許されるわけがない。
エイルは素早い動きでアルフレッドの制服を掴むと、彼の逃亡を封じる。一方制服を掴まれたアルフレッドは視線で「離して欲しい」と訴えるが、エイルが受け入れるわけがない。
「あのー、僕は……」
「ああ、君は行くといい」
「俺は――」
「何か言ったか?」
先輩隊員はエイルに対しては優しい素振りを見せるが、違反行為を平気で行なうアルフレッドに対しては厳しい態度を取る。先輩隊員の言葉にエイルは頭を垂れると、アルフレッドを置き去り自分は控え室へ向かう。
エイルの行動はアルフレッドにしてみれば非情そのものに映ったが、そもそもの原因は仕事をサボっているアルフレッドにあるので、大声で「行くな」と叫ばれても、エイルが振り返ることはなかった。
◇◆◇◆◇◆
「今日より親衛隊の一員となりました、エイル・バゼラードです」
親衛隊の控え室へ到着したエイルは、控え室の中で待機している先輩隊員に挨拶を行う。今年の新人はエイルとアルフレッドともう一人いるのだが、試験の時に見た程度なので顔を覚えてはいない。
エイルの挨拶に、先輩達が気さくに声を掛けてくる。先程の人物といい、優しい雰囲気の先輩達にエイルは安堵の表情を作る。彼が親衛隊の面々に抱いていたイメージは、堅苦しく厳しい。しかし先輩達を見ているとそのイメージが当て嵌まらず、これなら頑張ってやっていけると安心する。


