「まあ、理由はどうあれ親衛隊の一員になったのだから、お互い頑張ろう。それに親衛隊は、噂ではもてるらしい」
「……褒めて損した」
真面目な意見を言っていることに感動していたが、最後の最後でアルフレッドが本音を漏らしてしまう。しかし親衛隊の隊員はもてるといっても、一部部分の隊員だろう。現にアルフレッドは、侍女達に嫌われている。
それでも世の中には、奇特な人物がいるという話も聞く。そのような人物に巡り会えたら、恋の花が咲く確立が高い。そのように自分なりの意見を言うエイルだが、その意見が悪い方向に働いてしまう。
「そういえば、あのメイドは?」
「メイド?」
「あの時、一緒にいた子だ」
「ああ、マナのことか」
「そう、マナちゃん」
アルフレッドが、マナの名前に“ちゃん”を付けていることに、エイルの眉が微かに動く。マナはバゼラード家にとって、大切な存在。その大切な人物を馴れ馴れしく呼んで欲しくないというのが、彼の本音。だが、ここで下手に反論するとアルフレッドの思う壺なので、グッと堪えた。
エイルの微妙な変化に、アルフレッドの口許が緩んでいく。その点を突いてからかってやろうと思うアルフレッドだったが、偶然彼等の前に先輩の親衛隊隊員が姿を現す。刹那、二人の間に緊張が走った。
「其処で、何をしている」
「あっ! 特に……」
仕事をサボっているアルフレッドの姿に、親衛隊の先輩の冷たい視線が突き刺さる。普段は堂々としているアルフレッドだったが、先輩の迫力に勝つことができずオドオドしてしまう。
ふと、暫くアルフレッドを睨み付けていた先輩隊員がエイルの存在に気付く。見慣れない存在に最初は訝しげな表情を浮かべていたが、遅く入隊する新人がいることを思い出したのか、穏やかな表情へ変わっていった。
「ああ、君は……」
「新しく親衛隊の一員になりました……」
「隊長から聞いている」
シードが親衛隊の面々に事前に話をしていたのだろう、詳しい説明を行なわなくてもすぐにエイルの存在を理解してくれた。だが、のんびりと会話をしている場合はない。先輩隊員がアルフレッドに注意したように、今は休憩時間ではない。それに、新人は新人専用の仕事が存在する。


