ロスト・クロニクル~前編~


 それに、一箇所に長く止まっているわけにはいかない。彼等が立ち話を行なっている廊下は、多くの人間が行き来している。勿論、立ち話をしている彼等の存在は邪魔で視線も痛い。

 自分達に集中する「邪魔」という雰囲気を含む視線に申し訳なさそうな表情を浮かべると、エイルはアルフレッドの背中を叩き親衛隊の控え室へ行くことを促す。それに対し彼は特に文句を言うことなく、逆に言いたいことを悟る。どうやら彼も、集中する視線に気付いたらしい。

 雰囲気的に居辛いので、彼等は足早に立ち去る。最初は無言で目的の部屋に向かっていたが、途中で沈黙に耐え切れなくなったアルフレッドが口を開きエイルとシードの会話の内容を尋ねた。

「期待しているって」

「俺は無いぞ」

「……当たり前だよ」

「躊躇いなく言うな」

「本当じゃないか」

 アルフレッドとの関係はラルフより短いが、ラルフと同等の友人関係を築いているので言葉に容赦ない。またアルフレッドもエイルの性格を理解してきているのだろう、彼の言葉に本気で反撃はしない。

「あっ! 一部分は褒めていた」

「本当か!?」

「王家に対しての忠誠心が高いって、褒めていた。その点は、僕もそう思う。試験の時、凄く必死だった」

「忠誠心は……ある。まあ、笑わないで聞いてくれ」

「別にいいよ」

 不真面目の代名詞と思われているアルフレッドだが、彼なりに真剣に母国の将来を考えているという。彼は剣の修行で様々な土地を巡り、その途中で母国クローディアのいい噂や悪い噂を耳にしていた。そして悪い噂で一番耳にしたのは、クローディアの将来を危惧するもの。

 産まれながらにして高い地位にいるわけではないアルフレッドが足掻いたところで、国を正しい方向へ導くことはできない。しかし黙って物事がいい方向に進むのを待っているのも、彼の性格上有り得ない。

 自分は、何ができるのだろうか。そのように真剣に考えた時、修行で磨いた剣の腕を王家の為に使用しようと結論を出した。だから王家の守護者である親衛隊の試験を受け、親衛隊の一員となったということを話していく。アルフレッドの親衛隊への入隊の動機を聞いた時、エイルの心臓はきつく握り潰されたような感覚に陥る激しく。そう、動機の部分で完全に負けていた。