「辞める」という単語に、アルフレッドは過敏に反応を示す。勿論、彼の中に辞めるという選択肢は存在していない。華やかな雰囲気を苦手としているが、他の部分は気に入っているという。
アルフレッドらしい発言に、エイルは苦笑してしまう。いや、アルフレッドが真面目な発言は似合わない。それに彼が真面目な発言をした場合、明日大雨か雷が大地に降り注ぐかもしれない。ふと、エイルは大事な内容を思い出す。昨夜今日の準備をしていた時に考えていた内容を、アルフレッドに尋ねないといけないのだ。剣の練習に付き合ってくれるかどうか。
それと、祭りの時の踊りは踊れるのか。そう、率直に彼に尋ねる。アルフレッドは遠回しの言い方より、ハッキリと言った方が理解してくれる。その点はラルフと似ているので、わかり易かった。
案の定、瞬時に返事が返って来る。剣の練習には付き合ってくれるが、残念ながら踊りの方が無理という。何でも祭りの雰囲気が苦手で、そういうものには参加しない主義という。
「残念」
「まあ、その代わり剣の方はいくらでも付き合ってやるぞ。と、お前って剣は使えなかったか?」
「基本面は平気だけど、アルフレッドのように剣の修行を長く行なったわけではないし……」
「はーん、だから練習か」
「そういうこと」
アルフレッドはラルフと性格面が似ているが、瞬時に物事を理解する能力が高いので有難い。アルフレッドもエイルと剣の修行ができることが嬉しいのか、完全に乗り気だ。その証拠にボキボキと指を鳴らし、どのような練習を行なうか脳内でシュミレーションしていく。
するといい内容が思い付いたのか、アルフレッドの口許が徐々に緩んでいく。彼のその怪しい表情にエイルは背中に冷たい物が流れ落ち、身震いする。これこそ、第六勘というべきか――反射的に、アルフレッドと距離を置いた。
「何だ?」
「表情が怖い」
「ふっ! バレたか」
「やっぱり」
誤魔化しの言葉が返ってくると予想していたが、すんなりと自分が怪しい考えを行なっていたことを認める。しかし逆にその素直さが不安感を生み出してしまうが、アルフレッドを追及してもいいことがないというのをわかっているので、言いたいことをグッと抑え込んだ。


