ロスト・クロニクル~前編~


 アルフレッドの場合、体格面も関係しているがどちらかといえば性格の方が深く関係している。親衛隊の一般的なイメージは、強くてかっこいい。その中でアルフレッドは、異質な存在だった。

 いや、よくよく考えれば侍女達も悪い。彼女達は親衛隊に自分達が抱いているイメージを当て嵌めているだけで、たまたまアルフレッドがイメージから逸脱しているだけなので彼は責められない。そのようにアルフレッドを慰めるように、エイルが説明していく。すると彼の説明が余程嬉しかったのかアルフレッドの顔が緩み、瞬く間のうちに復活を果した。

「流石!」

「何が?」

「こうやって、明確に説明してくれたことだ。やっぱり、メルダース卒業の奴は頭がいいな」

「褒めても、何も出ないよ。それに……」

 何かを発見したのか、途中で言葉が切りアルフレッドの口を手で覆う。何の前触れも無い行動にアルフレッドはエイルの手を払い除け言葉を発しようとするが、彼も此方に来る人の気配を感じ取り言葉を封じた。

 彼等の前に姿を現したのは、城勤めの高位の文官。身分の高い人間の登場に、エイルとアルフレッドは身構え相手に対して深々と頭を垂れた。その者の外見の年齢は五十代前半で、第一印象は知的な中年。しかし激務やストレスが影響しているのか、茶色の髪が少々薄い。

 アルフレッドは相手のことを知らないが、雰囲気で身分が高い人物だと悟り頭を垂れた。一方のエイルも相手の顔を知らないが、長く親衛隊の隊長を務めていたフレイなら知っている可能性が高い。

 頭を垂れているのは、親衛隊の隊員。相手はその程度しか思っていないのだろう、無言のまま彼等の前を通過していく。そして、徐々に遠ざかっていく足音。

 文官と一定の距離が取れたことを横目で確認したエイルは下げていた頭を上げると、やれやれという雰囲気で短い溜息を付いた。それに続くようにアルフレッドも頭を上げ、此方は盛大な溜息を付く。

「慣れん」

「そう言ったら、仕事ができないよ」

「貴族の坊ちゃんはいいな」

「これは関係ないよ」

 どちらかといえばアルフレッドは野生児なので、城の華やかな雰囲気が合わないのは仕方がない。しかし合わないといって、我儘を言っていいものではない。彼は望んで、親衛隊の一員となった。そして苦手で嫌いで合わないという理由を言うのなら、親衛隊を辞めないといけない。