ロスト・クロニクル~前編~


 エイルの宣言に、シードは無言で頷く。これにより、最後の新規隊員が加わった。新規の三人がどのような働きをしてくれるかは不明だが、全員が王家に忠誠を誓っているということは間違いない。勿論、不安がないわけではない。しかし「不安」というのを表情に出しては、部下達に示しが付かない。

「隊長。父から宣言と聞いておりますが……」

「それは無理だ」

「やはり、まだ……」

「そういうことだ。それに、ご病気の姿で謁見など無駄に不安を煽ってしまう。お前の場合は別だが。さて、話は以上だ。これから親衛隊の一員として、真面目に仕事を遂行するように」

 真実を知らない者が物事の本質を見ても、本来の意味を受け取ることができず無駄に騒ぐだけ。シードはそのように言いたいのか、何処か含みを持たせた言い方を行う。だからといって、エイルも全てを把握しているわけではない。今はただ頭を垂れ、シードの言葉に従うしかできなかった。




 退室後、エイルは綺麗に掃除が行き届いている廊下を歩いていた。これから彼が向かおうとしている場所は、親衛隊の詰め所。その場所はシードから聞かされているので何とか向かうことが可能だったが、城の全てを把握しているわけではないので不安の方が強い。ふと、彼の目の前にアルフレッドの姿を表す。これも女神の導きなのか、突然のアルフレッドの登場にエイルは口許を緩めた。

「よお!」

「うん」

 それは短いやり取りだったが、両者の挨拶の仕方はこのようなもの。それを証明するかのように、アルフレッドがエイルの肩を叩く。

「痛い」

「おっと、悪かった。そんなことより、お前は似合っているな。俺なんか、侍女に笑われたんだぜ」

 何でも、自分では似合っていると自信を持っていた。だが周囲の反応は冷たく、逆に失笑されてしまったというが、周囲の反応はわからないわけではない。現在二人が着ているのは、親衛隊の制服。青を基調とした制服は、シードやエイルのようにスタイルがいい人間が着れば見た目は素晴らしい。

 だが、筋肉隆々のアルフレッドが着ると正反対の悪いイメージを作り出す。制服は身体にピタっと張り付き、鍛えられた筋肉が目立つ。鋼の肉体と表現できる身体は、親衛隊の壁として活躍できる。見方によってはいい面の方が強いが、いかんせん侍女達には不評だった。