自分の欠落している部分は、自分が一番わかっている。その欠落している部分を補い、一人前に成長しないといけない。エイルは再び自身に気合を入れるように、両手で頬を強く叩く。
これにより気合が更に注入されたが、力いっぱいに叩いた結果、両頬が赤く染まってしまう。しかし、これくらいで泣いてはいられない。明日から厳しい生活が待っているので、これくらいで泣いていては勤まらない。エイルは考えを纏めると、止まっていた準備を進め明日に備えた。
◇◆◇◆◇◆
「待っていた」
城の一室に響く力強い声音の主は、親衛隊隊長のシード。彼の言葉にエイルも力強い声音で返事を返すと、抱負を語っていく。そんなエイルの真面目な態度に、シードは苦笑いをした。
アルフレッドと全く違う。
それが、シードの答えだった。彼もシードの前で自身の抱負を言っていたが、真面目という言葉は程遠い。ただ、親衛隊の一員として頑張っていくという気持ちは伝わったという。
相変わらずのアルフレッドの行動に今度はエイルの方が苦笑してしまうが、これでこそアルフレッド。彼が真面目に抱負を語っていたら、それはそれで恐ろしいもので嵐の前触れになってしまう。
だが、個人的な話を長々としている場合ではない。今日から、両者の立場は隊長と部下に変わる。エイルは以前からシードのことを知っていたとはいえ、馴れ馴れしい態度を取ると他の隊員に示しが付かない。
ふと、シードの表情が一変する。それに伴い、部屋に漂う空気が重くなっていく。それを感じ取ったエイルは表情を強張らせると、シードからの言葉を待つ。この瞬間、互いの立場が明確となった。
「隊員達への挨拶を忘れるな」
「はい」
「期待している」
「はい」
シードが発した最後の言葉に、エイルは戸惑いを覚えつつも返事を返す。勿論、隊員全員に期待している。しかし、シードがエイルに向かって言った「期待している」という言葉の裏側に何か深い意味が隠されていると、本能的に悟る。エイルはシードの言葉に、頭を垂らす。そして、クローディアの王家に――女王シェラに忠誠を誓うということを宣言した。


