ロスト・クロニクル~前編~


 彼は自身の知識を活用したいということで、研究所勤めがいいと言っていた。斜め上を行く性格を表面に出さなければ「メルダース卒業」ということで、就職先を好きに選択できる。

 あのように見えてラルフは努力家なので、望んだ場所に就職している可能性が高い。いや、就職して欲しいというのがエイルの願い。一箇所に止まっていれば、多方面に迷惑を掛けないで済む。

 エイル自身もメルダースを卒業し、故郷で新しい道に進もうとしている。しかし、どちらかといえば悪い面の方が強い。メルダースでは、悪友のラルフがいた。そして親衛隊の一員になった今、同僚にアルフレッドがいる。どうしてあのような人物が自身の周囲に集まってくるのか――と、本気で悩んでしまう。

 試験後、新人が三人入隊した。アルフレッドがあのような性格なので、もう一人が真面目な性格の持ち主であって欲しいと願う。流石に二人が同じ性格であったら、精神的にしんどい。

(頑張らないと……)

 溜息の後、自身に気合を入れていく。明日から、自分が置かれる立場が変わる。生半可な決意では、やってはいけない。それに親衛隊の中では「メルダース卒業」は、通じないだろう。

 いや、そもそも「メルダース卒業」というのをひけらかすことはしない。そのようなことをしても親衛隊の中での地位が上がるわけではなく、寧ろ空しくなってしまう。また、逆に立場が悪くなってしまう場合も考えられる。これから身を置く場所は、実力の物をいう世界。

 その中で、明日から仕事をしないといけない。緊張していないといったら嘘になってしまい、それに一流の学問を学んだとはいえ実戦経験はない。また、魔法の使用も授業の一環であって制約の中での使用しかない。

 しかし実戦の中にそのような制約は存在せず、瞬時の反応が大事になってくる。それを考えると、剣の修行で旅をしていたアルフレッドの方が有利だ。何せ、実戦に勝る経験はない。

 そうなると、アルフレッドに訓練を付き合って貰うのが一番いい方法だ。本音の部分では「嫌だ」という気持ちがないわけでもないが、変なプライドは持たない方がいい。そうでなければ、成長できない。

(明日、頼むか)

 何と返事が返ってくるかわからないが、アルフレッドの性格を考えると無碍に断ることはしないだろう。それに断るようであれば、訓練に付き合ってくれるように言葉で誘導すればいい。話術の点に関しては、ラルフ相手に鍛えてある。それにアルフレッドは、親衛隊の一員になりたくて試験でとんでもないことをした人物だ。その点を上手く利用すれば、訓練に付き合ってくれる可能性が高い。