シェラは、試練を受けることができない。いや、受ける前から結果はわかっている。シェラは直系の一族であっても、男子ではない。それに現在の国の状況を考えれば、女神が認めるわけがない。
オルデランは、言葉を続ける。その試練を受ける際に、相当の危険が付き纏うという。正当な後継者が試練を受けた場合、何ら問題はないが正当な後継者ではない人物が試練を受けた場合、最悪な結末が待っている。
その者が、王家の血筋の人間であったとしても関係ない。女神が認めるのは正当な後継者で、玉座に座るのに相応しい人物。それ以外の人物は、女神を憚った者として命を落とす。
エメリスは、二面性を持つ女神。表の顔は全ての国民に平等に愛情を注ぎ慈悲を与えるが、裏の顔は非情で残忍。大神官という地位にいるからこそ、オルデランは試練を恐れている。その説明の終了と共にエイルは溜息を付くと、額にねっとりと滲み出る汗を袖口で拭った。
「何故、試練を――」
「敵側が望んでいます」
「……成る程」
ふと、タイミングを見計らったかのように大神殿の中に人の気配が漂う。そして、静寂を破るのは足音。その足音にオルデランは、大神殿を訪れた人物に柔和な笑みを浮かべ頭を垂れた。
相手側も大神官がいることに驚いたのか、反射的に頭を垂れ挨拶する。その挨拶にオルデランも挨拶を返すと、小声でエイルに「奥へ戻ります」と、伝えた。流石に、今の話を人前ですることはできない。
それに大神官という多くの者の手本にならないといけない立場なので、不穏な行動は取れない。彼の言葉にエイルは頷き返すと、オルデランは衣擦れの音を共に踵を返すと大神殿の奥へ戻って行った。
女神よ、見守り給え
そう心の中で女神に祈りの言葉を捧げると、彼も踵を返し大神殿を後にする。そして自分自身の課せられた新しい役割を再確認すると、クローディアの反映の為に全身全霊を尽くすと誓った。
◇◆◇◆◇◆
屋敷に戻り夕食を食べ終えると、エイルは自室で明日の準備をしていた。ふと、メルダースでの生活を思い出す。ラルフは、元気にやっているだろうか。なんだかんだといって、悪友のラルフのことを心配してしまう。そして第一に考えたのは、就職先で上手くやっているかどうかだ。


