しかし、重い内容長い沈黙が続く。一体、どれくらいの時間が過ぎた頃か――オルデランが口を開いた。
「……いえ」
出した言葉は、短い単語。しかしエイルは、その短い単語でオルデランが言いたいことを悟った。オルデランの言葉に、エイルの呼吸が徐々に荒くなっていく。同時に、安心感も存在していた。女神がシェラを女王として認めたら、裏切った者達に有利に働いてしまう。
シェラは、偽りの女王。
そして、女神の意思に反している。
その点を追求していけばいいとエイルは意見するが、オルデランはそれができない理由を話す。現在、偽りであっても女王という地位に就いていることによって、シェラの命が保障されている。
また、策略を練らずに感情論で動いてしまうと、シェラに執着を示している馬鹿公子ことミシェルが何を仕出かすかわかったものではない。それにミシェルの行動は読めないので、その点も厄介だ。
今、シェラは母国クローディア王国にいるが、ミシェルが隣国のエルバート公国に連れて行ってしまったら手も足も出なくなってしまう。歯痒いが、現在の状況を維持していく――が、最善の選択とオルデランは言う。
「……確かに」
「バゼラード伯も言っておられましたが、エルバード公国の公子殿には気を付けなければいけないと……」
「学園長も、そのように」
「クリスティ殿も!? でしたら、尚更現状の維持を図らないといけません。全ては、国の為に――」
「はい」
シェラがあちらの手の中にある今、此方は手も足も出ない。だが、唯一の救いは最強の魔女クリスティを味方に付けたこと。クリスティの持つ権力は凄まじく、一国の王が彼女の前で跪き顔面蒼白になってしまう。その人物が味方にいるのだから、自分達にとっては心強い。
「それに、もうひとつ」
「何でしょうか」
「シェラ様は、試練を受けられません」
オルデランの告白に、エイルは目を見開いていた。オルデランが言う「試練」がどのようなものなのかは、父親から聞かされているので内容は知っている。この「試練」というものは女神エメリスが与えるもので、これによりその人物が王位継承者として相応しいかどうか試される。


